日記

トルコの勇み足か。

 フランスでのテロが欧米列強の結束を強めることになり、結果ISISが自ら首を絞めることになるのではといった予測をブログに書いたのが11月22日のことだった。気になるのが、そのことを心良く思わないサウジアラビアやイスラエル、そしてトルコの動きだった。
 トルコは静観しないだろうとも書いた。残念ながらその通りになってしまった。それもロシア軍機の撃墜とは最悪の動きだ。トルコは領空侵犯を繰り返したので自国領土で撃墜したというが、当然ロシアの主張とは食い違う。仮にトルコの言う通りだとしても、ロシア機が領空にいたのはたった十数秒である。過激すぎる行為と言わざるを得ない。
 思えばエルドアン政権は今年に入り不安定化している。エルドアンは今は大統領だが2003年に権力に着いた時は首相だった。12年もの長期政権である。権力は腐敗するという言葉もある。長くなればそれなりに強権的になるのはつきもの。春の総選挙では与党であるAKP(公正発展党)が敗北。原因はクルド人の政党PKKが躍進したことによる。トルコではこのクルド人の独立問題を長年の火種として抱える。憲法改正して長期に大統領の座にいるつもりのエルドアン大統領にとって、この敗北は痛かった。そこでクルド人政策を転換しトルコ人のナショナリズムを煽りはじめる。そして11月再び総選挙を実施するとAKPが勝利する。不安定化しているとはこのような理由による。
 ややっこしいがクルド人の居住地域はトルコ、シリア、イラク、イランにまたがっている。シリアの内戦は政府軍と反政府軍そしてISISの三つ巴の戦いとなっており、トルコは反政府軍を支援してアサド政権打倒の立場。理由は内戦が収束しアサド政権が存続すればシリアに準国家的クルド人自治区ができる可能性があり、これをトルコは嫌っていると言われる。
 だから以前のブログでトルコが静観しないとした。何らかの動きをするに決まっているはずだった。言うまでもなくトルコはNATOの一員で加盟国は集団的自衛権で結ばれている。露土戦争になれば第3次世界大戦勃発も絵空事ではなくなる。そんな訳でロシアは戦争を仕掛けてこないなどと思ったことだろう。あわよくば反ISISでまとまる連合国に楔をうてるとも思ったが、今の所そんな塩梅では進んでいないようだ。
 撃墜はエルドアン大統領の勇み足になるのではないか。ロシアの経済制裁によってただでさえ不安定な大統領の基盤が揺らぐとさらに強権化に走り、今度はトルコが紛争化するかもしれない。静かなイスラエルも不気味である。中東で新たな火花が弾け出さないよう祈るが、返す返すも日本がやることは平和外交に尽きる。

2015-11-30 | Posted in 日記No Comments » 
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