2015-11-22

ISISの終わりの始まりかもしれない。

 13日にパリで起きたISISによる大規模テロのことを考えていた。なぜISISはこのテロを実行したのか。もちろんテロは許されないことだが、少なくとも前回は神ムハンマドを嘲笑物として風刺続ける出版社に対するものであった。そこにはそれなりの理由があった。しかし今回は無差別テロで理由はない。シリア空爆に参加したという理由だけでの無差別テロだ。今回がはるかに批判が高まるのは明らかだった。
 案の定、フランスのオランド大統領は9.11後のブッシュ大統領同様に「これは戦争だ」とこぶしを振り上げ、シリア空爆を強化する。英国のキャメロン首相も空爆を明言した。ロシアも早かった。それまで自国飛行機の墜落の原因を明確にしてこなかったが、すぐさまISISによるテロだと発表した。
 2年前、アサド政権への空爆(当時はISISではなく政府軍への空爆だった)をプーチンの助け舟で踏みとどまれたオバマ大統領は(2013年9月のブログ「新たな協調とガラパゴス化する政治」参照)、何やかんや言いながらロシアとの距離感を近づけていたが、国内の抵抗もあり今一つはっきりできなかった。しかし今や堂々と会ってISIS対策を話しあっても非難されることはない。空爆どころかISIS掃討後のシリア体制やイランを軸とした中東安定策などを議論しているかもしれない。
 これまで米国や英国が1年以上にわたり空爆を実施してきたが、その効果を疑う話どころかISISをひそかに援助しているといった報道もなされている。その証拠が彼らがこれだけ世界から敵視されていても勢力を伸ばしてきたことかもしれない。しびれを切らしたプーチン大統領が米国に断ってISIS空爆を実行に移したのはつい数か月前のこと。日本の新聞はロシアの空爆を非難めいて書くが、オバマ大統領の了解も得てのことで、その成果ははるかに上がっているようだ。財源であった油田も放棄しており財政も厳しくなりつつある。それが今度は露に加え米英仏が本気で叩きにかかる。
 つまりISISにとっては今回のテロは決して得策ではなかったと思うのだ。そう考えると今回のテロは、ISISの統率力などのガバナンスが弱体化し(つまりロシアの空爆が効いて)以前計画していたものが偶発的に起きたのかもしれないし、単にフランスに不満を持つISISのメンバーが起こしたものかもしれない。
 いずれにしてもISISの勢力はこれから衰えさせられていくだろう。それとともにシリアの内戦は収まり中東ではロシアとイランの力が強まる。内戦後のシリアをどう収めるかに向かって各国の思惑が絡み合う。フランスも今度のテロを利用し介入を強めるはずだ。それとともにイスラエルやサウジアラビアといった王国がどう動くか。もちろんトルコも静観はしない。
 今回のテロは中東をめぐる新たな火花の始まりかもしれない。普通の国々の思惑が絡んで新たな紛争が起きないことを願うばかりだ。普通の国ではなかった日本が参加しようとしたら手痛い目にあうだろう。我が国は非暴力に徹する安全保障外交で世界安定の道を開くしかない。

2015-11-22 | Posted in 日記No Comments »