2013-06-14

間違っているのは貴方の方です。安倍総理!

今月号の中央公論、「総理がついに本音を明かした」として安倍総理と田原総一朗さんの対談が載っている。その中で、集団的自衛権について総理は「現実に基づいた議論をすべき」として、次のようなことを語っている。

公海上で、日本の船を警護するためにいる米艦船に、ミサイルが飛んできた。近くにいた日本のイージス艦が察知。見過ごしたら何百人もの米兵が死ぬ。撃ち落とすべきか否か。「当然、撃ち落とすべきでしょう」と多くの人が答える。でもそれが集団的自衛権の行使そのものであり、現状では許されないと話せば、「そうなんですか」ということになる。世論調査でもこうした個別案件について是非を尋ねると、7割くらいは行使賛成です。

いっけんなるほどと思われるが、はたしてどうか。そもそも米艦船の近くにイージス艦がいるならば、米艦船が日本の船を警護する必要などない。高性能の日本のイージス艦が警護すれば良い。攻撃されれば自衛権で自分で撃ち落とせる。それもできないようなら、米艦船は日本の艦船さえも警護しなければならなくなる。そんな間の抜けた国の助けなど必要ないというだろう。

さて、現実に即して考えてみる。まず、日本有事ではない状況で日本艦船の近くにいる米艦船が突然(意図を持って)ミサイル攻撃される状況は、そんなに無い。日米が同時こんな行動するのは日本近海しかない。総理が言っているミサイルを発射する国とはどこか定かではないが、とにかくその国の近くで、米艦船と日本艦船が威嚇効果を持った演習か情報収拾をやっているときだろう。

まずそんな時であれば当然警戒態勢をとっているはずだから、米軍を攻撃するミサイルが飛んできたら米軍がまず撃ち落とすはず。なすすべもなく損害を被ることなどあり得ない。まず日本の出番はない。加えてこんな攻撃をすれば、当然、米国への宣戦布告をすることであり、その国もそれなりの体制は整えているはずだから、米軍も察知して体制を整えているはず。やれば全面戦争。こんなシチュエーションを考えればミサイル先制攻撃はしにくい。これが「米軍の抑止力」なのだ。それでもその国がやるのであれば、その国が日本も攻撃できるミサイルをもっているならば、当然、わが国にある米軍基地も自衛隊基地も同時にたたくはずである。そうなると日本有事となるので、日本は自衛権を発動し米軍機も基地も守るという行動に出ることになる。

つまり、意図的な攻撃は抑止されるか、わが国への攻撃と一緒に行われることになるので、集団的自衛権云々の話は必要ない。では安倍総理が考えるミサイル攻撃の可能性は、双方戦争まで考えない「偶発的な場合」ということになる。偶発的にミサイルが発射されることなど万が一にも考えられないが。仮にあったとしてもそんな場合ならば、外交の出番となり、それによって早期収拾が図られるはずだ。自衛隊が攻撃参加して事態を混乱することは米国にとっても好ましくないはずだ。

こう考えると、安倍総理の描く状況はあり得ないことになる。安倍総理自身が「現実に基づいた議論」をしていない。むしろあり得ない状況を想定して、集団的自衛権の必要性を意図的に肯定させようとしていることになる。これは権力者としてNGですよ、総理。

以上の考えは何も私が言っているのではなくて、防衛庁長官官房や防衛研究所所長を勤めた防衛の専門家柳澤協二さんが書いた雑誌「世界」の論文「行使容認論の意味不明」にあったもの。ちなみに柳澤さんは、実際に北朝鮮のミサイル発射を監視する米国のイージス艦が日本海に展開した時に北朝鮮から戦闘機が発進して危険な状態であった(イージス艦のレーダーが高性能でもミサイルに指向している場合には、戦闘機の接近を探知できないらしい)という指摘があったことにも触れ、しかしそれを承知の上でミサイルを監視していたのであれば、米軍は、直ちに攻撃を受けるような状況ではないと判断していたはず、といっている。

ついでに、第1次安倍内閣で議論された「集団的自衛権の4類型」のもう一つのよく出る話に、「米国に向かう弾道ミサイルを撃ち落とす(迎撃)こと」であるが、これも現段階では可能性はない。つまり迎撃ミサイルは弾道ミサイルよりも速度が遅い。弾道ミサイルは発射されてもすぐに飛んでいくコースは読めないので、日本の上空を越えたころに発射しても迎撃ミサイルは弾道ミサイルに命中することはない。これも将来技術が進歩して可能になった場合の話である。そんな架空のことを想定して集団的自衛権行使の議論するのは、まったく現実に基づいた議論ではない。

96条の3分の2条項を世界に類を見ない厳しいもといって国民を騙してみたことといい、安倍さんは「現実に基づいた議論」をしたくないらしい。しっかりしないとまたいつ騙そうとするか・・・。

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2013-06-14 | Posted in 日記No Comments »