2015-04-17
訪問先からの批判
安部首相の訪米が近づいている。そんな中、当の米国からの安倍批判が顕著だ。
その特徴は、首相が最も評価して欲しい「集団的自衛権行使という勇ましい安全保障政策の転換」よりも、「保守回帰の思想や不安定化する近隣外交批判」にある。
一つは、月刊誌「選択」の4月号の巻頭インタビュー。「日米同盟の形骸化は止まらない」という題で、カーネギー国際平和財団副所長のダグラス・パール氏の談話を載せている。
「今回の安部晋三首相訪米について米国では誰も関心を払っていないし、興味もない」と冒頭から辛辣である。
そして、集団的自衛権の行使容認や武器輸出解禁などの米国要望に応えるのは、宿題のようなものとし、クリアしたからといって褒め称えられるようなものではないと一蹴する(まあこれはいただけない。でもこれがアメリカの本音だと認識しておくべき)。
その上で「オバマ政権は安部首相の言動の端々に見える強硬な保守色に警戒している。どんなに米国が与えた課題をこなしても、戦前の日本に回帰するような動きをすれば、米国からは歓迎されない」とか、「(安倍外交は)米国ではほとんど評価されていない。特に(中、韓)との余計な摩擦を生み出していることを懸念」と安倍首相が持つ歴史修正主義的思想を非難している。
「すでに米政権内では『安倍はトラブルメーカー』と認識」されており、今後、日中間で何かあって米国に泣きついても、米国は突き放すことも十分に考えられる、とズバリ言い放っている。
カーネギー国際平和財団は、米国でも5本の指に入るシンクタンクで政権への影響力も大きい。政治的に割り引いて読んでも安全保障よりも東アジアの安定が優先であるとの考えが明確なのは確かだ。
もう一つは、元外務官僚の天木直人さんのブログ。以下抜粋。
安倍首相の訪米が近づく中で、奇しくも二つの雑誌が、米国は安倍首相を相手にしていない、という衝撃的な記事を掲載した。(ここでいう二つの雑誌の一つは前述した「選択」なので、天木さんと私は同じ思いをしたことになる。)
ひとつはリベラルタイム5月号に掲載されている日高義樹の「ブッシュ陣営が懸念する『安倍外交』」という記事だ。
その中で日高氏は、次期大統領選挙の有力候補者であるジェフ・ブッシュ陣営の大物政治家が安倍首相を自分の前で次のように批判したのを聞いてびっくりしたと暴露している。
「安倍首相は、アベノミクスなどで経済的には評価されているが、外交戦略を持っているようには見えない。アジアをどうしたらよいのか、中国、韓国、ロシア、北朝鮮と言った国々の指導者たちとどう渡り合うか、わかっていないようです。」
そして日高氏は、この政治家だけではなく、米国で新政権をつくろうとしている共和党ブッシュ派の政治家や評論家たちは、みな安倍首相の戦略のなさを嘆いているとして、その記事を次のように日高氏は結んでいる。
「このところの安倍首相の人気は、『日本が世界で一番素晴らしい』という日本のマスコミの自己陶酔がつくりだした、日本国内だけのもののようだ」と。
もっと驚いたのは、選択4月号の巻頭の掲載されているダグラス・パール・カーネギー国際平和財団副所長の「日米同盟『形骸化』は止まらない」という記事だ。(略)
そしてブログの最後を天木さんは、「そのピエロ(つまり安倍首相)を支持する5割ほどの日本国民は、何と形容すればいいのか。」と結んでいる。
安部首相は先の予算委員会で、米議会上下両院で日本の首相として久しぶりに演説することを誇らしげに語っていた。しかし内実がこの二つの批評のとおりだとしたら、安倍訪米は失敗に終わる。国内外からの批判に政権がどれだけ耐えうるか。
それはひとえに株高と国内マスコミ統制にかかっているとしたら、何とも情けない話となる。政党も私たち政治家も彼の国からの批評を真摯に受け止めなければならない。一国の代表をコケにする海外批評は、そのまま国内政治の貧困にも向けられている。
今日の平和の句 4月17日
「第九条そらにやすらふ雲雀(ひばり)かな」
船津丸 守さん(76)佐賀市
評 金子兜太「繁殖期の高いさえずりとともに、真っ直ぐに春の空に舞い上がる雲雀。その長閑さも憲法九条のおかげですよ」