2013-12-06

中国の防空識別圏拡大が意味するもの。

中国が防空識別圏を拡大したことで、東アジアの緊張が高まっている。そもそも防空識別圏とはなんなのか?そんなに中国の識別圏拡大が大変なことなのだろうか?

最近我が国では、中国や韓国を必要以上に敵視する雰囲気にあると思う。中国の覇権拡大の動向が、安倍政権の集団的自衛権行使容認論の理由の一つといっていい。

防空識別圏とは、英語ではAir Defense Identification Zoneといい、略称ADIZ(アジズ)。国の周辺を飛行する航空機の国籍、種類等を識別するために設ける空域。陸続きの国であれば国境選上だからあまり意味はないが、海岸線の場合は領海となる12海里(領地より22.2キロ)より遥かに広く設定されることになる。

ただ、アジズは国際法上確立された概念ではなく、各国が自由に設定していいことになる。したがって領空や領土の話に直接結びつくものではない。
自由に設定できるといっても、航空機の識別が可能な空域でなければ意味がないので、固定レーダーや空自がもつ大型レーダーを搭載した早期警戒管制機AWACS(エーワックス)のようなものでカバーできる範囲となる。

だから小笠原諸島などは日本のアジズ内には入っていない。ちなみに竹島も日本のアジズの外で韓国のアジズに含まれているのは余り知られていない。中国の拡大前もアジズが重なる空域もある。そんなものなのだ。

東アジアの各国のアジズ(図参照)は、米国が設定したもので、各国は異論なくこれまで従ってきた。それを初めて中国が独自に広げたわけだ。もともと国が自由に設定していい性質ものだから、中国の行為はしかたないともいえるし、日米の懸念に反応し元に戻すとも思えない。

IMG_2249

今の時期に尖閣諸島を含む空域にアジズを拡大したのだから、日本の懸念表明は当然だし、アメリカからしたらアメリカが決めた戦後秩序を勝手に変更するのは面白くないのは当たり前なのだ。

ただ中国はアジズの拡大と一緒に、圏内を飛行する場合は、飛行計画の通報を求め、従わない場合は防御的緊急措置を行うとした。防御的緊急措置がどんなことなのか判然としないが、中国的なちょっとした威嚇であることは間違いない。

アジズとは別に国際民間航空機関により設定された飛行情報区(FIR,Flight Information Region)がある。我が国では国交省の所管で、こっちは航空機の航行に必要な情報を提供することもあり、航行する航空機は事前に飛行計画の通報を各FIRに行っている。だから中国アジズへの通報もそんな大したことではないので、アメリカは念のために航行する民間航空機に通報を促すようにしたのだろう。これが冷え込んだ日中関係にある日本からすると、日本同様に中国に対して懸念を表明したのに、なんだ。ということになる。

結論から言って、今回のアジズ拡大で日中間に何か深刻な問題が惹起する可能性はないといっていい。
むしろ今回の中国側の措置は、日本に対するメッセージも込められているかもしれない。日韓、中韓、中米の二国間には不測の事態に備えての何らかの緊急的協議制度が確立している。不測の事態が大きな問題に発展することを防止するためだ。しかし日中間には存在しない。何かあったときの協議体制がないのだ。これは大きな問題。日中それぞれの政府が問題と考えている。

尖閣諸島の領有権をめぐっては中vs日米の構図であり、尖閣諸島はアメリカが決めた日本のアジズ内にある。中国からしたら対等な関係とはいいがたく、協議体制を議論するテーブルに着くには環境を変えておきたい。加えて尖閣諸島への中国側の出方を牽制する最近の米国の姿勢もある。
そんな中での中国のアジズ拡大は様々な政治的意図があると思って間違いない。

過剰反応し、協議の機会を失わないようにしなければならないと安倍政権に言っておきたい。総理は自らに「力の外交」のイメージを植え付けてしまった。冷静に対処しようとなると弱腰との印象を与えてしまう。とかく国のリーダーは、ちょうど今の朴韓国大統領のように内政がうまくいかなくなると、国外に国民の関心を誘うようにナショナリズムを煽る政策に出る傾向がある。

安倍総理は集団的自衛権行使容認、憲法改正、美しい国へという政策に代表されるように、国防や愛国心といったキーワードが似合う総理大臣だ。今の特定秘密保護法案強行採決後に、支持率低下となれば、中国のアジズの拡大を違った方向にうまくいかすかもしれないという不安がある。
ここは正確な情報を国民に提供し、冷静に対応しつつ、日中協議まで進ませることがベストの選択だ。そんな意味でも秘密保護法は問題なのである。

2013-12-06 | Posted in 日記No Comments » 

 

日記219 国民は甘くない。

昨夜の本会議は予想に反して、日をまたぐどころか、午後10時30分には終了した。こちらが構えていた本会議での強行採決を与党は見送った。

なぜか?徹夜明けで疲れていたから。特別委員会での強行採決という横暴ぶりに、自らが恐れを為したから。両方あり。だが、ここに来ての世論の盛り上がりはすごい。今日も朝から石破幹事長がテロと恐れる声や太鼓が鳴り響き、その数は恐らく時間の経過ごとに増えるだろう。

昨日の強行採決の行為や繰り返しテレビで流れるその映像、ネットで無数に流れる写真や声に触発された人々が危機感を感じ始め、その熱は、まさに燎原の火のように広がり始めた。

そんな情況下での同日の強行採決を逡巡したのは事実ではないだろうか。この怒りは、心配していたが、単に一過性のものではないように思う。恐らく強行採決後も安倍政権批判となって世論の中核を占めることだろう。心せよ、安倍政権。世論、国民は貴方たちが考えるほど甘くないぞ。

2013-12-06 | Posted in 日記No Comments »