2010-10-04

良い季節ですね。金木犀が咲きましたね。

一昨日、いつものように皇居一周のジョギングに出ようと宿舎の門を通ったときである。1年間忘れていたあの香りが突然と鼻腔の奥にとびこんできた。そう金木犀。初めての場所なので香りの主がどこにいるのかその時はわからなかった。

今朝、出勤時。また探す。管理の方も手伝ってくれた。「そうですね。確かに香りますね。どこだろう」とやっぱり、彼にも存在がわからない。しばらく二人で探す。見つけた。隣のビル工事現場との境に四角く剪定された形で立っていた。その形からも香りと黄色い花がなければ僕には金木犀だとはわからない。

写真を撮っていると、昔、金木犀のことを小文のコラムに書いたことを思いだした。結構気に入っていたので、読み返してみた。「なかなか良いよな」と自画自賛しつつ少し手を加え再掲してみる。ほんのこの時期だけだから、皆さん、金木犀の香りに季節を感じ、今このときに生あることに感謝してみませんか?

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肌寒い季節。月明かりの中で、懐かしくも切ない、ほのかな香りに立ち止まる。

金木犀の花言葉は「謙遜」。「彼」らはこの季節以外は目立たない。風に漂う芳香に秋の始まりを感じ、秋の深まりとともにその存在を忘れる。

「君はそこに居たんだね」。

子どもの頃から体が覚えたその香は、いつも懐かしい。

雌雄違株の金木犀の原産は中国。日本には雄株のみが渡ったといわれる。だから「彼」らは種子を遺せない。繁殖は主に取木だそうだ。

1年間のほとんどをひっそりと生き、この季節、遠い祖国の決して会えない「彼女」らに届けとばかり蓄えた力を香りに変え、一気に解き放つ。香りに切なさを感じるのはきっとそのせいだろう。

「真実」という花言葉も持つ「彼」、今年も裏切ることないその香に、一人思う。素敵な季節だ。

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PS 下の写真は宿舎の玄関と横の小庭。最初、ここを探したが見つからなかった。

2010-10-04 | Posted in 日記No Comments »