2012-06-05

家庭の電気料値上げの怪。

東京電力の家庭の電気料値上げが問題になっている。平均10%もの値上げなのだから当然なのだが、仮に福島の原発事故が起きてなかったらどうだろう。これほど議論になっていただろうか。

先日、値上げに関して消費者庁が経産省と協議する項目が「主要なチェックポイント」として示された。消費者庁は値上げの影響を受ける一般の消費者の立場で、値上げが妥当かどうかを協議する使命を負っている。そのチェックの中に、「規制部門と自由化部門の損益構造・料金設定等が、国民の理解を得られるものとなっているか」「部門間で、利益率の著しい乖離がある場合、その原因を速やかに分析し、適正化することとしているか」がある。これまでだったら何のことだかわからないし、気にも止めなかったはず。早い話が規制部門とは家庭、自由化部門とは企業のこと。つまり顧客である家庭と企業間で不利益が生じていないかということ。

東電の総電気使用量つまり売電量の比率は家庭が4割、企業が6割で企業部門の方が2割ほど多い。ところが利益率は何と家庭が9割で企業が1割と圧倒的な差となる。東電が売る電気の4割しか使用していない家庭部門が支払っている料金が東電の総利益の9割を占めているということ。理由は企業部門の電気料金は自由化によってとことん値下げされたことによる。もともと日本の電気料金は高かった。このため電気を多く使うアルミニウム精錬などはとうに淘汰され、我が国にはなくなった。製造業を中心に自家発電設備を整え電気会社からの高い電気をなるべく控えている。そんな中で使用量が多い企業顧客のために値下げされたわけだ。しかし家庭部門は自由化されなかった。高い電気料金のままにとどめるという規制がかかったままなのだ。その結果前述のようないびつな損益構造になってしまったのである。

このような実態を見たときに国民はこれまでどおり素直に家庭の電気料金値上げに応じられるだろうか。消費者庁のチェックポイントは極めて妥当だといえる。しかし同じ省庁間のこと、経産省との協議がどれほど厳しくされるのか不安だし、東電の経営を考えた場合、やむを得ないなどと簡単に落ち着く可能性もある。ここは政治がしっかりと判断をしなければならないことは当然。しかし一方で国民は賢い消費者にならなければならい。先のような料金設定を行っているのは東電だけではないのだから。

ところで当然東電は経営効率化を求められている。東電が出した経営効率化への取り組みの資料によると、東電職員の給与の比較対象は「常用労働者1000人以上の企業」だそうだ。約60万人の国家公務員の給与を決める人事院勧告は50人以上の企業規模。これをもっと下げろと主張する政党や議員もいる中で、1000人以上とは少々違和感を覚えるのは私だけだろうか。

2012-06-05 | Posted in 日記No Comments »