2013-02-07

アベノミクス アメノミクス アベノリスク

マスコミでは円安と株価高の報道が踊る。オールマスコミがアベノミクスを評価しているようだ。
○○ミクスとは経済学のエコノミクス(Economics)との合成語である。有名な政策にレーガン米大統領が行ったレーガノミクス、ニュージーランドのロジャーノミクスがある。いずれも規制緩和を中心とした新自由主義的経済政策だが、評判は良くない。レーガノミクスは最後にはプラザ合意を日本に押し付け、強引なドル安に導いた。ニュージーランドでは規制緩和が医療崩壊や犯罪の増加、教育の質の低下などを招いたとされている。
アベノミクスは、大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略を三本の矢とする経済政策である。三つの政策の中で今現在姿が見えているのは、公共事業支出を増大する大型補正予算だけだが、これもまだ法案が成立したわけではない。金融政策は市場にある国債を買い上げる量を増やすことで、通貨量を増やす。しかし今やっていることは、国債買い入れの基金に10兆円を増額すること。「必要であれば無制限に積み増す」と言ってるだけ。成長戦略は、復活した経済財政諮問会議の議論待ちで発表は6月だろうと言われている。しかし間違いなく円安、株高に振れている。理由はわからない。あえて言えば、民主党から自民党への政権交代の浮揚感と「アベノミクス」と命名した大々的マスコミ報道に、市場が必要以上に反応しているということだろう。むしろ円安は、リーマンショック以降、世界が自国の通貨安を目指して大きな金融緩和策を実施してきた中で、日本の財務省と日銀だけが財布の紐が固かった。そのことが¥の安心感につながり、投資家が$や€を売って¥を購入する。「日本も世界と同じことをするぞ」と宣言したのだから、¥を保有しておく理由が無くなった。だから¥が売られているので円安になるのは当たり前のことかもしれない。しかし、この円安が続くと輸出は良いが輸入は割高となり、輸入に頼っている製品の価格が上がりだす。デフレの反対がインフレ=物価上昇だから、形の上では好都合でデフレ脱却、来年の消費税増税の地ならしにつながる。金融緩和を嫌う財務省がアベノミクスに唯々諾々と従っている理由がここにある。
しかし物価上昇は間違いなく家計を圧迫する。だから一緒に賃金も上がらなければ、割を食うのは勤労者や中小零細企業だけとなる。
昨日、同僚議員が財政演説に対する代表質問に立った。経済の専門家である。リーマンショック後の日本の対応を次のように批判した。
「(前述したようにリーマンショック後の金融政策が日本だけ違い、一人円高を招いた)08年9月、1㌦110円近かった¥レートが年末には90円台を大きく割り込む急激な¥高$安を招いた。これによって、リーマンショックの震源地である米国の鉱工業生産が15%しか落ちなかったのに対して、わが国の生産はその倍の30%以上落ち込んだ。その後、製造業に働いていた非正規労働者の派遣切りが横行し、生活保護者が急増した。これは働くことのできる若い失業者が生活保護に大量に流入したためだ。今の生活保護の問題はここに端を発したのです」
同じことが今起きつつある。短期間の大規模公共事業は一時的なカンフル剤にはなるが、継続性がなく、デフレ脱却につながらなかったのは証明済み。当時はまだ金融緩和しなかったので日本国債の信用度は守られた。しかしアベノミクスは金融緩和も実施し、さらなる借金で公共事業を行う。しかも即効性のある成長戦略などない。
アベノミクスが成功するには、賃金が上がることが条件。しかし、グローバル経済に突っ込んだ日本企業は、合理化と人件費圧迫しか術を知らない。そんな中での公務員賃金の削減は火に油を注ぐようなものだ。
リーマンショックから立ち直っていないわが国。考えようによっては支離滅裂な政策のように思えるアベノミクスが、公共事業の大盤振る舞いのアメノミクスに終わり、いつの間にか熱気が消えアベノリスクにつながりかねない。非常に危険な綱渡り政策に、わが国は今、サーカスの観客のような気分のワクワク感でいるような気がしてならない。
良質な企業経営者の皆さんの善意と、地方公務員への人件費分の交付税削減政策を今からでも撤回させるような運動に期待するしかないのだろうか。やはり様々な意味で民主党の責任はとてつもなく大きい。

2013-02-07 | Posted in 日記No Comments »