日記

希望は絶望の中に。

内閣府が昨日、7〜9月のGDP速報値が前期比(2014年4〜9月)年率▲1.6%だと発表しました。驚きを持って今朝の新聞で報道されていますが、これは大方予想されていました。だから首相は消費税増税先送りという人気とりの政策を打ち上げ、これをもって解散しようとしています。総選挙の争点を無理やり消費税増税の是非にもっていこうというわけです。「解散」は自らの失政を糊塗するための愚劣な手法と言わざるを得ません。

さてこの前期比年率▲1.6%とはそんなに大変なことでしょうか?

前期(4〜6月)の前期比(1〜3月)年率が▲7.1%なので、悪かった前期と比べてさらに悪化したことになりますので、これは確かにショックです。ただ1〜3月は増税前の駆け込み需要で前期比(2013年10〜12月)年率△6.0%と大幅に伸びていますので、それより4〜6月は悪くなるのは当然といえば当然です。ただ良く比較される前回の消費税引き上げの1997年は、景気が悪化し、橋本首相退陣のきっかけとなりましたが、その時より今回の4〜6月のGDPのマイナス率が大きかったのに加え、前回は7〜9月でプラスに転じたので、今回も持ち直すだろうと楽観視されていました。しかし結果は1997年時よりもさらに深刻なことがはっきりしたことになります。ですから首相は橋本首相よりショックのはずですが、能天気に解散などと強がっているので話になりません。

よく4月の消費税増税が景気の足を引っ張ったと言われますが、そうでしょうか?

アベノミクスに浮かれていた2013年ですが、GDP前期比年率で1〜3月が△5.4、4〜6月△3.4、7〜9月△1.8とプラス幅が確実に減少し、年末の10〜12月に至ってはとうとう▲0.5のマイナスに転じました。1〜3月は駆け込み需要で消費が伸びるのは当然です。この例外の四半期を除けば、この1年8ヶ月のあいだGDPのそんなに良くなかったことになります。加えてこの期間は実質雇用者報酬も毎四半期マイナスで、特に増税が始まった4〜6月は大きく▲1.7(前期比)と落ち込みました。

つまりアベノミクスの効果はGDPを押し上げるまでに至らず、むしろGDPは足踏みしつつ漸減に転じたとろに消費税の増税が追い打ちをかけたといえるでしょう。その最大の理由は雇用者報酬(一部は上がったのですが、大手中心それもボーナス中心です。)が上がらなかったことです。

面白い数字があります。以前ブログにも書きましたが、内閣府が発表する現金給与総額(一人当たり賃金月額)です。所定内給与は2012年6月から2014年4月までずーっとマイナスです(前年同月比)が、残業代なのど所定外給与やボーナスなどの特別給与は2013年の1月以降は概ねプラスで推移し、そのため所定内給与はマイナスにもかかわらず現金給与総額がプラスとなるという結果となっています。特にボーナスの影響は大きいのですが、今春闘の結果をみてもボーナスが支給できる会社は比較的大手と言えます。所定内給与のマイナス幅が大きく、マイナスが長期間続いているということは、雇用者の多くを占める中小零細やサービス業で賃金上げ進んでいないこと、賃金が安い非正規雇用が増加していることなどが考えられます。

一般の人の賃金が上がらないとなれば、わが国GDPを支える約6割の国内消費が上がらない。企業も設備投資を控える。日銀がじゃぶじゃぶお金を流して利息を下げて銀行に投資を促しても、貸したい銀行も貸出先がみつからない。したがって日銀が垂れ流す円も社会で回ることはない。消費は上がらず、GDPは伸びない。

加えてアベノミクスによる円安(これもアベノミクスによるものかどうか、本当のところはわかりません。経済学者の伊藤光晴さんは円安は財務省の為替介入ではないかと指摘しています・・・「世界2013年8月号」と近著「アベノミクス批判」)原因の消費者物価上昇です(様々な原因で原油価格が安くなっているのでまだいいのですが、仮に原油価格が上がれば事態はもっと深刻になります)。ますます消費は控えられ、加えて消費増税なので第2、第3四半期がGDPがこうなるのも冷静に見れば予想できたはずです。

1997年増税時と今は状況はさらに深刻になっています。①非正規雇用が飛躍的に増加し社会の中心的雇用形態になってしまった。②グローバリゼーションの影響で日本的経営が崩れ、株主中心主義に変化した結果、雇用者報酬が上がらず、むしろ減少傾向にあること。③公共事業型の地方の経済政策が国地方の財政悪化によって持続できなくなり、地方の経済状況が悪化し雇用問題を中心にして自然要因による少子化以上のスピードで人口減少が進んでいること。④国内消費の中心である生産年齢人口が減り続け、当時と比較して約700万人ほど減少し、総人口の減少も始まったこと。⑤約540兆円だった国と地方の借金総額が倍以上膨らんでいること・・・などなどで、どれ一つ取っても深刻な社会問題です。

アベノミクスの三本の矢ではこれらの問題の抜本的解決が難しいのは一目瞭然ではないでしょうか。わが国はどこかで政策転換をはからなければなりませんでしたが、55年体制とそれが作ってきたガバナンスがそれを許しませんでした。最後のチャンスの民主党政権も未熟さとそれまでのガバナンス側の巻き返しで実現できませんでした。

黒田日銀総裁のバズーカ砲的量的緩和も、アベノミクスというより何とか景気を良くして、将来に備える(持続可能な社会保障と財政再建)ための消費税増税を実現するためだったと言えますが、これも首相は見事に裏切り、①景気は良くならず、従って税収も増えないし、来年は法人税減税を約束しているためさらに税収は落ち込む。②(税と社会保障の一体改革を反故にし)持続可能な社会保障への道筋を閉ざして国民の将来不安を増幅させた。③財政悪化はさらに進むとともに、黒田総裁の出口の見えない量的緩和(増税を失敗したので意味のない悪政になりつつあります)により自国通貨である円の価値が落ちることにより、日本国の信頼が揺らぎ始めた・・・などなど、国民を道連れにして闇に突っ込んでいこうとしています。闇には何があるのでしょうか。

安倍政権は暴走政権ですが、首相最悪の暴走解散を、今、誰も止められない。最後に止めることができるのは、首相最悪の暴走を最後の暴走にできるのは、有権者、国民となります。ここで止め切らなければ首相とともに深い闇の中へ突っ込んでいきます。絶望の中に希望があると言います。

最後の政策転換のチャンスが12月14日の総選挙となるでしょう。

2014-11-19 | Posted in 日記No Comments » 
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