日記

風立ちぬ No10 本当は怖い政治の話 

 2012年末に政権を奪取した安倍首相(当時)は翌13年にアベノミクス「成長戦略」として「女性活躍社会」に言及した。その背景があってであろうが、2014年9月3日に発足させた第二次安倍改造内閣で小渕優子経産大臣、高市早苗総務大臣、松島みどり法務大臣、山谷えり子国家公安委員長兼拉致担当、有村治子女性活躍担当の5人の女性閣僚を誕生させ話題をさらう。ところがその翌月の10月20日、午前中に小渕優子経産大臣、午後に松島みどり法務大臣が相次いで辞任するというハプニングが起きたのだ。わずか一ヶ月余りのスピード辞任、その裏には恐ろしい政治の舞台裏があるのではと当時「ふかよみ」してみた。

 一挙5人の女性閣僚の誕生は9月の安倍内閣人事の目玉であっただけに、政権にとって痛手になったことは間違いない。しかし、この辞任劇をよくよく考えてみると本当は怖い政治の現実が見えてくる。
 5人の女性閣僚の中で辞任した2人は夫婦別姓賛成。残った3人はいずれも夫婦別姓に反対する筋金入りの右寄りの保守であり、安倍首相の思想と重なる。
 さてその一人松島みどり法務大臣(当時)を、民主党(当時)は地元選挙区で団扇を配布した行為は公職選挙法違反にあたるとして刑事告発した。告発にあたって民主党議員が地元で聞き取り調査をしたが、「これは完全にアウトだな」とすでに配布のときから声が出ていたという。
 配ったものが「団扇」であれば配布禁止の有価物となり有罪となる。よって松島さんは、「団扇のようなもの」と永久に否定し続けなければならない。予算委員会の場でそんなバカげた議論が繰り広げられた。「つまらない議論するな」と言った声もあったが、決してつまらない話ではない。
 松島さんは、法を司る権限と責任を持つ法務大臣。12月に施行されるあの特定秘密保護法の所管大臣でもある。死刑執行の判断もくださなければならない。明らかに法律違反の行為あるだけに、団扇を「団扇のようなもの」と言い続けなければならない人物にこの国の要職を任せていいはずがない。
 松島さんは最後まで辞任を否定していたが、同じ日に2人辞めた方が世論の注目も短くて済むし、小渕さんの辞任の方が注目度も高い。松島さんは総理と同じ町村派だが、午前中に小渕さんが辞任したことで官邸がすぐに印籠を渡し、団扇議論の幕を引いたのではないだろうか。ただ松島さんは安倍首相が嫌いな朝日新聞の出身でもある。
 一方の小渕優子さん。松島法務大臣の団扇疑惑発覚の後に政治資金問題が表に出、それがあれよあれよととんでもない額の疑惑に発展し耐えきれず先に辞任した。これまで安倍内閣の閣僚不祥事はあまり表に出てくることはなかった。というより官邸がもみ消してきたのだと思う。それほどマスコミに対し力を持っていたはずだが、それがなぜ今度の組閣で噴出したのか。特に一番まともな女性閣僚だと思われていた小渕さんが真っ先に辞めることになるとは。
 話は転回する。小渕さんの父、故小渕恵三は旧田中派の流れの経世会の本流。一方の安倍首相は敵対する清和会である。経世会強き時代、清和会は党内でも厳しい立場に追いやられ、権勢逆転したのは小泉内閣の誕生からである。小渕さんは小泉首相の時の郵政民営化法審議は投票を棄権しており、直後の解散総選挙では民営化賛成の誓約書の署名に最後まで抵抗した。夫婦別姓賛成であり、私は当時の国会答弁を聞いていて原子力の再稼動にも積極的賛成ではなかったのではないかと思っている。何から何まで安倍首相とは相容れないのである。そして小渕さんの人気は高く、初の女性首相ではとの声も上がっていた。
 もともと小渕さんは今度の閣僚入りを固辞していたと言われる。それを無理やり説得して入閣させたのは、他ならぬ安倍首相だった。
 閣僚選考に際しては身辺調査が行われるのは常識のこと。言い開きのできないほど杜撰な政治資金の管理を官邸は把握しきれていなかったのだろうか。「知っていた」と考えるのが普通だと思う。そう考えると怖い舞台裏が見えてくる。
・・・国民に人気のある女性政治家の筆頭は小渕優子衆議院議員。女性活躍社会を目玉に上げる安倍首相は小渕人気にあやかりたいので固辞する小渕を説得し、思惑通り大臣を承諾させた。それも経産大臣に。原発推進にあまり賛成ではないような小渕がどう指導するか見ものではないか。加えて小渕優子には父小渕恵三から続く杜撰な政治資金管理の問題もある。小渕人気を使ってのサプライズ人事で支持率を上げ、資金管理の問題に火が付けば閣僚辞任でよい。郵政民営化に反対し、夫婦別姓にも賛成する経世会の人気者を潰しておくことが肝要。・・・あくまでも独り言であるのだが。でも小渕さんは未だ表舞台には出てきません。

2021-05-31 | Posted in 日記No Comments » 
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