日記

風立ちぬ№3 「素直な7割の人々②」

 先週の続きである。 
 村上春樹さんの小説「1Q84」には、なぜだかわからないがNHK受信料の集金人が重要な役割で登場する。主人公の「天吾」の父親の職業がそうだし、もう一人の主人公「青豆」も自分が隠れているアパートを執拗に尋ねてくる集金人に煩わされる。良い役回りでの登場ではないから、NHKもちょっと困っただろうなと思う。なぜNHK集金人なのか。学校の先生でも保険の外交員でも良いじゃないかと思いつつ読破してしまった。村上さんの小説には不思議な魅力があるし、不思議な描写も多い。「海辺のカフカ」では、空から魚が降ってきた。
 話は変わる。総務委員会では毎年NHKの予算審議を行う。必然、受信料の支払率が話題になる。これがほぼ7割(今は8割を超えていて、口座引落が主流になっているので集金業務も外部委託されている。したがって不祥事が発生した際の不払い増も以前ほどではなくなっている)。この数字、高いか低いか。ちなみに英国のBBCは、9割以上を誇る。じゃやっぱり低いかとなりがちだが、あっちでは違反者には罰金約20万円、逮捕・拘留もある。1Q84に登場する集金人どころの話ではないのだ。日本のような温情な取り立てでは、世界標準の人々は誰も払ってくれないのだろうなと思う。
 国民の7割の人が放送を信じ、7割の人が素直に受信料を支払ってくれている日本放送協会のなんと恵まれたことか。
 NHK会長を決めるなど、絶大な権限を持つ経営委員会委員の同意人事の審議が先日の国会であった。NHK側が推薦してきた5人は極めて安倍総理と近い面々である。安倍さんの元家庭教師だったり、昨年の総裁選前に安倍さんを総理大臣にしたいと応援した文化人たちだ。来年の安倍好みの会長人事を睨んでの布石だと言われる。もみ手しながら権力にすり寄って放送の中立が聞いてあきれる。
 素直さが時に仇にもなる。彼の地のような強制的な取り立てであるのなら、こんなことにも敏感になるかもしれないが、払う払わないのつばぜりあいが集金人との関係に矮小化された日本では、NHKに対する国民の監視もたかが知れているではないか。そう村上さんは言いたかったのかもしれない。素直なことは良いことだが、権利意識まで脱ぎ捨ててはいない7割でなければ、秘密の時代の到来を止めることはできない。

・・・2013年11月22日筆。前回書いたようにこのおよそ2週間後に特定秘密保護法が可決され、翌年籾井会長が誕生した。2021年になっても官邸圧力でキャスターが交代されたのではとの憶測が耐えない。今日3月1日、菅総理長男の7万円接待で官邸広報官を辞職した山田氏もNHKに圧力電話をかけたのではないかという疑惑が持たれている。

2021-03-01 | Posted in 日記No Comments » 
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