日記

風立ちぬ№2「素直な7割の人々」

 7割。日本でマスコミを信頼する国民の割合である。第5回メディアに関する全国世論調査によると、信頼する割合はNHKで70%、新聞が69%、民放でも60%の高率である。これでも少し低くなったが、概ね7割に変わりはない。
 世界でこれほどマスコミを信用している国民はいないと言われている。「素直」なのだと喜んでも良いようだが、そうもいかない。信用しているマスコミの体制が、これも世界では珍しいクロスオーナーシップ制だからだ。
全国紙5社全てが民放を傘下に納めているという国も他にない。しかもキー局制なので、放送と新聞を通じ全国民への情報発信を独占していることになる。
 それを7割の人々が信用する。NHKと民間資本のマスコミの動き次第で、世論はいかようにもつくられると言って良い。
 国会に特定秘密保護法案が提出されようとしている。一方で日本では情報公開制度が不十分で、「知る権利」が確立されているとは言いがたい。素直な7割の人々は「知ろうとする」権利意識も少ないのかもしれない。
 特定秘密のあとから、集団的自衛権行使容認や憲法改正を国民が決断しなければならないときが来るのは承知のこと。素直な7割の人々も決断を迫られる。無関心に逃げ込めば、「決断」において、何が問題なのかと自問自答する苦悩はしないですむ。権力側からすれば楽極まりない。素直な7割の人々がいて、情報発信力を一部が独占する国だからこそ、特定秘密保護法成立後を恐れるのだが。

・・・書いたのは2013年10月22日。この年の7月に参議院選挙が行われ、自民党が現行制度下で最多の65議席を得て圧勝した。前年政権に返り咲いた自民党だったが参議院は野党が多数を占めるいわゆる「ねじれ」だった。安倍首相は政権基盤を強化し、経済政策「アベノミクス」とともに、特定秘密保護法の制定など保守色が強い政策を推し進めることになる。そして12月6日の深夜、国会を取り巻く市民の政府批判の怒号の中で「特定秘密保護法」が強行採決された。
 翌年1月、国民の7割が信じているというNHKの会長に籾井勝人氏が就任。最初の記者会見で「政府が『右』と言っているのに我々が『左』と言うわけにはいかない」というあの持論が波紋を広げた。その後も政治とNHKの関係は決して国民が納得するような状況にはなっていないと思う。

2021-02-22 | Posted in 日記No Comments » 
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