2019-05-16

ふるさと納税処分で、名ばかり地方分権が露呈。

 国の言うことを聞かない自治体がついに処分されました。泉佐野市など全国で4自治体です。ふるさと納税の返礼品を巡って総務省の再三の自粛要請に従わなかった。よってふるさと納税の優遇措置を受けられなくする、ということです。処分ではないと反論されそうですが、やっぱりお仕置きでしょう。仲間はずれという「いじめ」にも近い。
 子どもたちの会話です。ある子が「氷がとけたら何になる?」と問題をだします。ある子は「水になるよ」と答える。別な子は「春になる」と答えます。横で聞いていた大人はほのぼのとした気持ちになったりします。
 これが学校だったらどうでしょう。理科の授業中だったら「水になる」が正解でしょうし、国語の授業であれば「春になる」が感性豊かで良いね、となったりします。自由討議中だったら両方正解ですよ。「理科の質問です」と言わずに質問した先生が、「春になる」と答えた子を「それは間違い」と怒鳴りつけ、教室から追い出した、今回の処分はそんな感じがします。
 返礼品が豪華である。返礼品が地元産品ではない。など批判が相次ぎました。でもそもそも最初から返礼品競争を煽る制度だった。もっと言えば競争が激化しなければこの制度は今のように全国に広がるはずがなかったのです。
 ふるさと納税と「納税」という言葉を使っていますが、ふるさと納税は税金ではありません。「金品を贈る」という寄付行為です。「贈る」とは感謝、愛情、支援などの気持ちを表す際に金品を与えること。ですから、ふるさと納税は本来見返りを前提にした制度であってはならなかったはずです。これまでどおり寄付控除の対象くらいで良かった。しかしそれでは国民に広がるはずがないわけです。誰が考えてもわかりきっていたことです。しかし知恵者がいて見返りの返礼品を制度に組み込んだのです。そして手続きを簡素化した。手数料目的でふるさと納税を仲介する業者まで現れ、劇的に制度が広がります。関心がなかった自治体まで我も我もとこぞって制度を利用するようになる。豪華返礼品競争は起きるべくして起きたのです。
 ではもともと「ふるさと納税」とはどんな制度か。
 「この町」に住んでいる「ふるさと君」が「あの村」に3万円のふるさと納税をすることにしました。するとあの村から、14500円相当の返礼品が送られてきました。返礼品はあの村の特産品ではありません。でもふるさと君は知りません。ふるさと君は所得税20%適用のサラリーマンです。ふるさと君とこの町、あの村の損得勘定はどうなるでしょう。

まず、ふるさと君。
 ふるさと納税額は2000円(ふるさと納税下限額)を超えないと優遇措置を受けられないので、ふるさと君は国から、(3万円−2000円)×20%=5600円の所得税が還付されます。そして、この町では28000円(3万円−2000円)−5600円=22400円が住民税から控除されます。ふるさと君は、3万円のふるさと納税の結果、5600円+22400円+14500円(あの村からの返礼品)=42500円相当の利益を得ました。つまり12500円の儲けです。
 
あの村、はどうでしょう。
 ふるさと君からの3万円のふるさと納税は、あの村の地方交付税基準財政収入額算入外の収入ですから、3万円まるまる収入となります。返礼品の送付や選定等の事務料が3千円かかったとします。あの村は地元産品が無いので隣町から14500円相当の返礼品を購入しました。あの村の利益は、3万円−(14500円+3千円)=12500円の儲けとなります。

この町は、どうでしょう。この町は大きな企業も無く税額は豊かではありません。ふるさと君から入る予定だった住民税22400円がなくなるのは痛い。しかし、ふるさと納税はこの町のような自治体のために、税収減を交付税で補填することにしています。ですから22400円×75%(100%−交付税留保財源25%)=16800円が国から補填されます。ですから、この町の損失は22400円−16800円=5600円です。
※交付税をもらっていない裕福な自治体、例えば東京都などは、補填は受けられませんので、納税額まるまるが減収となります。でも東京のような裕福自治体は圧倒的少数なので、反対は黙殺されます。

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 ふるさと君に対し公共サービスを提供している。言い換えればお金をかけているあの町だけが損をします。ふるさと納税制度が、税の応益原則に反するといわれるのはこのためです。
 またふるさと君とあの村の関係も損得の算盤勘定の上になり立ちます。
 3万円のふるさと納税での返礼品の額の幅は、2千円より高額で(ふるさと納税下限額の2千円以下ではふるさと君が損をします)、納税額3万円から3千円の返礼品事務手数料を引いた27000円より安い、つまり2000円<返礼品<27000円の不等式が成り立ちます。返礼品事務手数料が同じと仮定すれば、この不等式の範囲内でふるさと君は納税自治体を選び、あの村は不等式の範囲内で他自治体と返礼品競争を強いられる。これがふるさと納税制度の実態です。もともとこういう制度だった。泉佐野市などは、この制度を最大限活用し収入を上げていた訳です。寄付という非資本主義的行為を税制度の特例と返礼品を組み合わせることによって、見事に資本主義制度に変えてしまった。
 おかしな制度をつくっておいて自治体間競争を煽り、批判が増えたから今度は、また法律をつくって自治体を脅す。国と自治体は対等平等のはず。しかし実態は国の言うまま命ずるまま。名ばかり地方分権を見せつけた「ふるさと納税騒動」でした。
 この制度、そのうちまた問題が起きます。規制をかけても規制の枠内で返礼品競争は激化するでしょう。自治体間の格差は広がり、不満は蓄積します。さらに規制をかければ消費者にとって魅力はなくなり、納税額は激減するでしょう。
 いずれにしてもいっときの夢の宴。そんな制度に付き合うよりもっと他のことにお金や人や知恵を使った方が良いに決まってます。

2019-05-16 | Posted in 日記No Comments »