日記

150年継続する富国強兵策。

 昨日、12月10日で秋の臨時国会が閉じました。この国会の目玉は何といっても入管法の改正。事実上の移民法といわれた法案です。10月24日という遅い開会日、そして48日間という短い会期では到底審議は無理といわれていました。しかし蓋を開けてみれば職権による委員会開催の強行と強引な審議で予定通り会期内で処理が終わりました。

 単一民族などという思想で日本人の純血主義を誇っていたのが我が国保守層。自民党を中心に移民政策には否定的で外国人に門戸を開いてこなかった。しかし少子化による労働力不足、低賃金の労働力需要などいった経済界からの要請は日増しに強くなります。悪知恵を働かせて仕方なしに作ったのが技能実習生制度という外国人労働者受け入れシステムです。実習期間は3年。早い話、実習という名を借りた任期3年の外国人派遣労働者受け入れ制度なのです。会社は正規社員よりも雇用調整が簡単な派遣社員の方が便利。それと同様に永住権を与える移民より3年を超えて働けない制度の方が国としても社会保障や何やらの負担も少ない。そして何より移民受け入れではないから保守のメンツも立つわけです。こうやってまともな移民政策の議論を先送りしてきた。しかしいよいよ労働力不足がさらに深刻になります。会社が派遣社員や非正規労働者がいなくては成り立たなくなっているのと同じように、日本も外国人労働者がいなくなればもたない産業(例えば建設、造船、農業、サービス業など)も出てきました。

 そこで今回の入管法改正となった訳ですが、相変わらず移民政策という根本的議論は先送りです。すべてが経済優先で動いています。労働環境がどうなるかなんて考えずに派遣法を改正する。もっと遡れば自動車産業などの儲かる業種の輸出のために木材自由化を進め、国内林業を事実上廃業させました。そのツケは今、中山間の衰退、限界集落につながり、最近では大雨で大量の流木発生です。これも手入れしなくなった山の荒れによるものです。

 さて今国会では入管法改正の影に隠れて重要法案も成立しています。一つは水道法の改正。これは水道事業への民間参入を認めるものです。事業の運営権を財産として設定し、この運営権を民間会社に売り渡すというもの。外国の水ビジネスが参入してくるのは明々白々です。
 もう一つは70年ぶりの漁業法改正です。いわゆる「浜」と言われる漁師の生業に民間ビジネスを参入させようというものです。
 いずれも市場優先、経済優先の政策です。一方で秋田、山口にはイージスアショアの建設が進められるように、防衛として本当に必要かの議論はなしに防衛費の肥大化が進みます。

 今週がNHK大河ドラマ「せごどん」の最終回です。NHKが西郷隆盛が活躍する幕末を今年の大河に持ってきたように、今年は明治150年です。西郷の親友大久保利通らが邁進した富国強兵策。日本は大政奉還からわずか40年足らずで日露戦争に勝利しました。しかしそれから40年間は無謀な戦争を拡大し続け、国内を焼け野原にして敗戦となります。その後、公害、自然破壊、急激な都市化などの様々な負の遺産を生み出した高度経済成長をも経験しました。低成長時代に入り、重厚長大中心の産業のあり方や成長一辺倒の政策に否定的な意見も大きくなります。行財政改革なども取り組まれます。しかし結果は国鉄や電電公社の分割や民営化を進めただけ。国の借り入れは増え続け、バブル崩壊後は消費増税は減税で帳消しとなり、さらなる景気対策に追われ、失われた20年を振り返ることになります。

 そして今なおたゆまぬ成長戦略が政治の中心です。加えて安倍政権は、軍需産業も立派な成長分野とする勢力と一緒になり安全保障環境変化を理由に防衛費増に血道を上げます。
 我が日本は、敗戦後の一時期を除き明治以降一貫して「富国強兵策」を続けている国です。150年たっても以前として「富国強兵」の愚策を続ける我が国の将来を憂う、そんな臨時国会でした。

2018-12-11 | Posted in 日記No Comments » 
Comment





Comment