2017-05-08

不可解な安倍総理の憲法改正宣言。

 憲法記念日の5月3日、都内で開催された改憲をしたい皆さん達の会合に安倍総理はビデオメッセージであいさつした。そのあいさつの中で、オリパラ開催の2020年に新憲法施行と、改正案として憲法9条1,2項はそのままに3項を加え、違憲と解される自衛隊を合憲化することと、高等教育の無償化を明記することを上げた。
 翌日の新聞各紙はこれを1面で取り上げた。僕にも知り合いの記者さんから「考えを聞きたい」と電話があったりしたので、安倍総理が投げたボールはそれなりの効果があったようだ。
 しかし僕的には安倍さんの「焦り」のような少々の違和感を感じた。
 まずは随分と改正案のレベルを下げたものだ。これでは改憲保守からの反発もあるだろう。橋下さんに乗っかって始めた96条の先行改正には敗北し、それならと強行した集団的自衛権行使はフルスペックでの行使を諦めた。朴槿恵大統領と決めた慰安婦問題解決もプーチン大統領との北方領土問題交渉も総理の支持母体の右の方からはすこぶる評判が悪い。仮に民進党や安倍政権以外の保守政権(例えば岸田さんとか)がこんな外交していたら右から袋叩きにあったはず。昨年炸裂した天皇の会見による生前退位問題も本来ならばやりたくなかったこと。皇室典範改正まではさすがに拒絶したが、右の皆さんからすれば内容も含め将来に課題を残した終わり方になってしまった。
 加えて籠池問題。理事長の籠池さんは近畿の日本会議の重鎮で大阪では結構有名な人と聞く。最初は「教育方針に感銘」などとしておきながら、自らに害が及びそうになるとそそくさと切って捨てた安倍ご夫妻の対応はこれまた評判が悪いそうだ。
 総理の強固な支持基盤の皆さんにとって、これまで総理がやってきたことは決して喜ばしいことではないのではないか。むしろ俺らの大将だからと我慢に我慢を重ねたきたきらいがあったりしたりと思う。
 こう考えてくると、今度の首相の改憲宣言はカリカリと頭にきつつあった「日本会議」を始めとる右の皆さんへの対応として、やらざるを得なかったのかも。といって自民党憲法改正草案とまではいかないまでもその類の改正案をぶち上げると一気に「反対」となるのは目に見えている。そこで公明党や維新の思いを忖度した改憲内容となってしまったのだ。きっと。でも首相の政治信条からすれば随分と不甲斐ない。とにかくオリンピックを開催し、何でもいいから憲法改正を実現した宰相として名を残したいのだ。まともに相手する必要もない。

 といっても安倍首相のこのボールはそもそも悪玉も悪玉、超ビーンボールであることを理解しておきたい。
 長い論争の中ですでに国民の多くは自衛隊は「合憲だ」と思うようになっている。その合憲の論理的支柱が「集団的自衛権を否定し、自衛に徹すること」であった。それを真っ向から否定する集団的事件権の行使を容認し、法律を制定させたのは安倍政権である。集団的事件の行使を基本とする安保関連法は全てと言っていい憲法学者が違憲とし、国民の多くもそう感じている。
 言わば自衛隊を違憲状態にしたのは総理自身ではないか。それを違憲と思われる状態と言って、だから憲法改正しよう!というのはあまりにも虫がよすぎる。
 加えて加えて2020年施行するには2018年末までに行う解散総選挙と翌19年にある参議院通常選挙をくぐっての話。それでも衆参で2/3の勢力を維持するという離れ業が必要なのです。しかも国民投票を実施しなければならない。ひょっとしたら参議院選挙と同時にやるつもりか。いやはや何とも。どうしてそんな超強気の思いが意思表示できるのか。もうどうにも理解できない。自信なのか気負いなのか、それとも裸の王様状態なのか。
 ただいえるのはここまで不遜な行動を許す状態をつくった主犯は民主党(当時)。だからこそ安倍政権からどんな憲法改正案を投げられても一糸乱れぬ反対行動をとる。それが国民に対する責任だと思うのです。

2017-05-08 | Posted in 日記No Comments »