2016-11-28

フランケンフィッシュと新自由貿易。

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 小さい方が普通の鮭であり、大きい方が俗称フランケンフィッシュと呼ばれる鮭。自然界には通常存在しない。深海魚の遺伝子を組み込んで人工的に作られた。通常の2倍の速度で成長し、大きさも巨大になる。アメリカのアクアバウンティー・テクノロジーという会社が開発し、アメリカではすでに市場に出回っている。
 さすがアメリカだと思うが、やはり向こうの人もこの魚には拒否感があるのは当たり前で、200万の反対署名で抵抗した。しかし結果は負け。それでもウォルマート以外のスーパーでは店頭に置かないでいると聞いている。
 メガ自由貿易協定で遺伝子組換え食品が扱われるのはTPPが初めてである。アメリカの食料会社が結構力を入れた。TPPでは遺伝子組み換え食品の定義も明記している。「モダン・バイオテクノロジー生産物」と呼ぶ。なんか遺伝子組み換えの方がストレートだけど、こうなっている。そして生産物とは何かも定義されている。遺伝子組み換えと言えば「農産物」が一般的だ。遺伝子組換えの大豆やとうもろこし。今では米もある。ところが今回、農産物に加えて「魚及び魚製品」もちゃんと定義されている。これだともう誰が考えても「フランケンフィッシュ」のことと思うしかないではないか。戦略的に日本に入れたいという下心が見え見えのTPP協定書になっている。
 日本は原則的に遺伝子組換え製品は国内流通を許可していない(「原則的に」という曖昧さの内実は別の機会で説明)。委員会での私の質問にも政府は、「TPP協定は今現在の自国の規定を変えることまで求めていない」「もし将来要請を受けても遺伝子組換え生産物(フランケンフィッシュ)輸入を拒否できる」と言い続けた。私の部屋に説明に来た消費者庁の役人も、そんなことになったら「体を張って止めます」と気合を込めていた。
 気持ちは評価しても、現実味は乏しい。なぜなら協定文では、もし輸入を認めないと政府が思うならば、「認めない合理的理由をを示せ」となっていて、合理的理由は「危険性の科学的根拠」となる。つまりフランケンフィッシュを食べると身体に悪い影響を与えるという「科学的根拠」を示さなければならない。これが難しい。そもそもあちらではアメリカ食品医薬局というれっきとした政府機関が安全性を認めている代物なのだ。「体を張って戦う」と言ったって勝負は見えているでしょう。というか、そのころは、委員会で答弁している人も消費者庁の役人も、もうだ誰も関係部署にいないでしょう。
 TPPが発行し、数年したらフランケンフィッシュは間違いなく日本のスーパーに並ぶ。良かったトランプさんのお陰でそうならないから。と安心するのはまだ早い。日米FTAをトランプ大統領が迫ってきたら日本は結ぶ。間違いない。少しの時間的余裕をもらった訳だから、もう少し政治を真剣に考えようではないか。政治は遠いところで関係ないと思っていたら大損する。政治は超リアリティの世界である。
 

2016-11-28 | Posted in 日記No Comments »