2016-11-25

新自由貿易。

 新しい定義が必要ならば、TPPは新自由主義における新自由貿易と表現し、過去の自由貿易と一線を引くべきだと思う。自由貿易は否定しないが、行きすぎた自由貿易は否定する。国境を越えて収益を上げる多国籍企業や金融資本、それと一体化した一握りの先進国が富を得る新自由貿易体制は、地球規模での1%対99%のさらなる拡大となる。
日本が世界、特にアメリカから富を集めた自由貿易の時代は、関税を含めた国内産業保護の政策が活きていた。その結果、アメリカとの貿易摩擦が国際問題になる程の経済発展をおさめたことを忘れてはならない。
 トランプ次期大統領がTPP離脱を表明するのは、アメリカの国民でさえ新自由貿易の犠牲者になったことが、NAFTAや米韓FTAの締結後に社会問題になっているからにほかならないからだ。全米の労働組合も環境団体もリベラルと思われる多くの団体が、TPPに反対し、賛成が全米商工会議所などであることからも明らかである。残念ながら我が国労働団体の代表連合は賛否を明らかにできない。日本は企業別組合であるため、経営側の姿勢がこういう時に色濃く反映してしまう。
 さて安倍総理への質問の話に戻る。今年は本選で賑わったが、昨年は民主、共和両党の大統領候補指名争いで賑わっていた。トランプ旋風は最後まで吹き荒れたが、民主党では最後の最後にクリントン氏に敗れたサンダース氏の旋風も吹き荒れた。民主、共和の二大政党の双方で新自由主義への批判が吹き荒れた大統領選だったのである。
 そのサンダース上院議員がまさに予備選の最中の2015年5月14日に上院で行った「TPPに反対する4つの理由」という名演説がある。その一部を引用して安倍総理に問うてみた。

サンダース・・・
 反対の理由の第一は、TPPが、NAFTA、CAFTA(米国とグアテマラ、エルサルバドル、コスタリカ、 ニカラグア、ホンジュラスの中米5カ国が2004年5月に調印した自由貿易協定。同年8月にカリブ海のドミニカ共和国(RD)も加わり、併せてCAFTA-RDと略称される)、中国との恒久的正常貿易関係、米韓FTAのような過去の破滅的な貿易協定をなぞって作られていることです。
 これらの貿易協定が十分な賃金が得られる数百万の雇用を私たちから奪い、アメリカの労働者が、1時間1ペニーで働く低賃金の国々の労働者との競争を強いられる「底辺への競争」につながったことは明らかです。
 議長閣下。繰り返し、繰り返し、この種の貿易協定の支持者たちは、これらの貿易協定がいかに多くの雇用を生み出し、我が国の中間層や労働者階級にとっていかに有益なものか、私たちに語ってきました。しかし、繰り返し、繰り返し、彼らが私たちに語ってきたことが、実際には全て誤りであったことが、明らかになってきたのです。にもかかわらず、彼らは再び、今回のTPPで同じ過ちを繰り返そうとしています。
 1993年、ビル・クリントン大統領は、NAFTAが5年間で100万の雇用を生み出すと約束しました。しかし実際にはNAFTAは70万の雇用を奪いました。
 1999年には、中国との恒久的正常貿易関係によって、中国市場がアメリカの製品やサービスに対して開かれていくという約束を私たちは聞かされました。しかし実際には、買い物にに行く人なら誰でも知っているように私たちが買うものは中国製品ばかりであり、中国との貿易協定は、アメリカ人から270万人もの雇用を奪ってきました。私は、中国との自由貿易を賛美するあらゆる言葉を耳にしたことをよく覚えていますが、それらの言葉がすべて誤りであったことが明らかになったのです。
 2011年に合衆国商工会議所は、米韓FTAが28万人の雇用を創出すると私たちに語りましたが、これも誤りでした。実際には、米韓FTAは7万5千の雇用の喪失につながったのです。
 なぜこのようなことが起きるのか。その理由は明らかです。
 アメリカ企業が、わざわざ国内に投資をし、アメリカ人労働者に1時間15ドル、18ドル、20ドルもの大金を支払い、保険制度を整え、環境規制に従い、労働組合に対処したりするでしょうか。
 彼らが自由に海外に出て行くことが許されており、賃金が1時間1ペニーで済み、環境に配慮する必要もないときにです。
 当然の結果として、これが実際に起きてきたことです。これらの貿易協定は全て失敗に終わっています。TPPも同じ原理に基いていますから、同じ失敗に終わるのは明らかです。これが、私たち上院がTPPに反対しなければならない一つ目の理由です」
  演説はまだ続くのだが、興味のある方はYouTubeをご覧あれ。時間の関係もあり上記引用文の一部を総理に紹介し、こう質問した。

「さあ総理。あなたはこのTPPでどれだけの雇用が新しく日本で生まれると断言されますか?」

 もちろん皮肉だが、もちろん総理は雇用数には一言も触れず、TPPの必要性をとうとうと述べた。政府資料ではおよそ80万人の雇用増を見込んでいる。しかし果たしてこれが本当なのか嘘なのか。おそらくそれを私たちが確認することはできない。なぜならこのTPPは発行しない。積極的に推進した米国が離脱をする。
 11月17日、50万ものホンマ製ドライバーを貢物に鳴り物入りでトランプ次期大統領と会うことができた我が宰相。「信頼するにたる人物だった」「自由貿易の必要性をしっかり伝えた」と会談後得意満面に表現した安倍総理。その後すぐ次期大統領は「就任後直ちにTPPは離脱する」とのビデオメッセージを世界に発信した。どこまでも厚顔無恥な日本外交、安倍外交である。今日も参議院では、TPP特別委員会で中央公聴会が開かれた。「TPPの終焉」といった雰囲気の公聴会だった。

2016-11-25 | Posted in 日記No Comments »