2016-11

フランケンフィッシュと新自由貿易。

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 小さい方が普通の鮭であり、大きい方が俗称フランケンフィッシュと呼ばれる鮭。自然界には通常存在しない。深海魚の遺伝子を組み込んで人工的に作られた。通常の2倍の速度で成長し、大きさも巨大になる。アメリカのアクアバウンティー・テクノロジーという会社が開発し、アメリカではすでに市場に出回っている。
 さすがアメリカだと思うが、やはり向こうの人もこの魚には拒否感があるのは当たり前で、200万の反対署名で抵抗した。しかし結果は負け。それでもウォルマート以外のスーパーでは店頭に置かないでいると聞いている。
 メガ自由貿易協定で遺伝子組換え食品が扱われるのはTPPが初めてである。アメリカの食料会社が結構力を入れた。TPPでは遺伝子組み換え食品の定義も明記している。「モダン・バイオテクノロジー生産物」と呼ぶ。なんか遺伝子組み換えの方がストレートだけど、こうなっている。そして生産物とは何かも定義されている。遺伝子組み換えと言えば「農産物」が一般的だ。遺伝子組換えの大豆やとうもろこし。今では米もある。ところが今回、農産物に加えて「魚及び魚製品」もちゃんと定義されている。これだともう誰が考えても「フランケンフィッシュ」のことと思うしかないではないか。戦略的に日本に入れたいという下心が見え見えのTPP協定書になっている。
 日本は原則的に遺伝子組換え製品は国内流通を許可していない(「原則的に」という曖昧さの内実は別の機会で説明)。委員会での私の質問にも政府は、「TPP協定は今現在の自国の規定を変えることまで求めていない」「もし将来要請を受けても遺伝子組換え生産物(フランケンフィッシュ)輸入を拒否できる」と言い続けた。私の部屋に説明に来た消費者庁の役人も、そんなことになったら「体を張って止めます」と気合を込めていた。
 気持ちは評価しても、現実味は乏しい。なぜなら協定文では、もし輸入を認めないと政府が思うならば、「認めない合理的理由をを示せ」となっていて、合理的理由は「危険性の科学的根拠」となる。つまりフランケンフィッシュを食べると身体に悪い影響を与えるという「科学的根拠」を示さなければならない。これが難しい。そもそもあちらではアメリカ食品医薬局というれっきとした政府機関が安全性を認めている代物なのだ。「体を張って戦う」と言ったって勝負は見えているでしょう。というか、そのころは、委員会で答弁している人も消費者庁の役人も、もうだ誰も関係部署にいないでしょう。
 TPPが発行し、数年したらフランケンフィッシュは間違いなく日本のスーパーに並ぶ。良かったトランプさんのお陰でそうならないから。と安心するのはまだ早い。日米FTAをトランプ大統領が迫ってきたら日本は結ぶ。間違いない。少しの時間的余裕をもらった訳だから、もう少し政治を真剣に考えようではないか。政治は遠いところで関係ないと思っていたら大損する。政治は超リアリティの世界である。
 

2016-11-28 | Posted in 日記No Comments » 

 

新自由貿易。

 新しい定義が必要ならば、TPPは新自由主義における新自由貿易と表現し、過去の自由貿易と一線を引くべきだと思う。自由貿易は否定しないが、行きすぎた自由貿易は否定する。国境を越えて収益を上げる多国籍企業や金融資本、それと一体化した一握りの先進国が富を得る新自由貿易体制は、地球規模での1%対99%のさらなる拡大となる。
日本が世界、特にアメリカから富を集めた自由貿易の時代は、関税を含めた国内産業保護の政策が活きていた。その結果、アメリカとの貿易摩擦が国際問題になる程の経済発展をおさめたことを忘れてはならない。
 トランプ次期大統領がTPP離脱を表明するのは、アメリカの国民でさえ新自由貿易の犠牲者になったことが、NAFTAや米韓FTAの締結後に社会問題になっているからにほかならないからだ。全米の労働組合も環境団体もリベラルと思われる多くの団体が、TPPに反対し、賛成が全米商工会議所などであることからも明らかである。残念ながら我が国労働団体の代表連合は賛否を明らかにできない。日本は企業別組合であるため、経営側の姿勢がこういう時に色濃く反映してしまう。
 さて安倍総理への質問の話に戻る。今年は本選で賑わったが、昨年は民主、共和両党の大統領候補指名争いで賑わっていた。トランプ旋風は最後まで吹き荒れたが、民主党では最後の最後にクリントン氏に敗れたサンダース氏の旋風も吹き荒れた。民主、共和の二大政党の双方で新自由主義への批判が吹き荒れた大統領選だったのである。
 そのサンダース上院議員がまさに予備選の最中の2015年5月14日に上院で行った「TPPに反対する4つの理由」という名演説がある。その一部を引用して安倍総理に問うてみた。

サンダース・・・
 反対の理由の第一は、TPPが、NAFTA、CAFTA(米国とグアテマラ、エルサルバドル、コスタリカ、 ニカラグア、ホンジュラスの中米5カ国が2004年5月に調印した自由貿易協定。同年8月にカリブ海のドミニカ共和国(RD)も加わり、併せてCAFTA-RDと略称される)、中国との恒久的正常貿易関係、米韓FTAのような過去の破滅的な貿易協定をなぞって作られていることです。
 これらの貿易協定が十分な賃金が得られる数百万の雇用を私たちから奪い、アメリカの労働者が、1時間1ペニーで働く低賃金の国々の労働者との競争を強いられる「底辺への競争」につながったことは明らかです。
 議長閣下。繰り返し、繰り返し、この種の貿易協定の支持者たちは、これらの貿易協定がいかに多くの雇用を生み出し、我が国の中間層や労働者階級にとっていかに有益なものか、私たちに語ってきました。しかし、繰り返し、繰り返し、彼らが私たちに語ってきたことが、実際には全て誤りであったことが、明らかになってきたのです。にもかかわらず、彼らは再び、今回のTPPで同じ過ちを繰り返そうとしています。
 1993年、ビル・クリントン大統領は、NAFTAが5年間で100万の雇用を生み出すと約束しました。しかし実際にはNAFTAは70万の雇用を奪いました。
 1999年には、中国との恒久的正常貿易関係によって、中国市場がアメリカの製品やサービスに対して開かれていくという約束を私たちは聞かされました。しかし実際には、買い物にに行く人なら誰でも知っているように私たちが買うものは中国製品ばかりであり、中国との貿易協定は、アメリカ人から270万人もの雇用を奪ってきました。私は、中国との自由貿易を賛美するあらゆる言葉を耳にしたことをよく覚えていますが、それらの言葉がすべて誤りであったことが明らかになったのです。
 2011年に合衆国商工会議所は、米韓FTAが28万人の雇用を創出すると私たちに語りましたが、これも誤りでした。実際には、米韓FTAは7万5千の雇用の喪失につながったのです。
 なぜこのようなことが起きるのか。その理由は明らかです。
 アメリカ企業が、わざわざ国内に投資をし、アメリカ人労働者に1時間15ドル、18ドル、20ドルもの大金を支払い、保険制度を整え、環境規制に従い、労働組合に対処したりするでしょうか。
 彼らが自由に海外に出て行くことが許されており、賃金が1時間1ペニーで済み、環境に配慮する必要もないときにです。
 当然の結果として、これが実際に起きてきたことです。これらの貿易協定は全て失敗に終わっています。TPPも同じ原理に基いていますから、同じ失敗に終わるのは明らかです。これが、私たち上院がTPPに反対しなければならない一つ目の理由です」
  演説はまだ続くのだが、興味のある方はYouTubeをご覧あれ。時間の関係もあり上記引用文の一部を総理に紹介し、こう質問した。

「さあ総理。あなたはこのTPPでどれだけの雇用が新しく日本で生まれると断言されますか?」

 もちろん皮肉だが、もちろん総理は雇用数には一言も触れず、TPPの必要性をとうとうと述べた。政府資料ではおよそ80万人の雇用増を見込んでいる。しかし果たしてこれが本当なのか嘘なのか。おそらくそれを私たちが確認することはできない。なぜならこのTPPは発行しない。積極的に推進した米国が離脱をする。
 11月17日、50万ものホンマ製ドライバーを貢物に鳴り物入りでトランプ次期大統領と会うことができた我が宰相。「信頼するにたる人物だった」「自由貿易の必要性をしっかり伝えた」と会談後得意満面に表現した安倍総理。その後すぐ次期大統領は「就任後直ちにTPPは離脱する」とのビデオメッセージを世界に発信した。どこまでも厚顔無恥な日本外交、安倍外交である。今日も参議院では、TPP特別委員会で中央公聴会が開かれた。「TPPの終焉」といった雰囲気の公聴会だった。

2016-11-25 | Posted in 日記No Comments » 

 

自由貿易の間違い。

 総理は、「我が国は、これまで自由貿易で発展し、今日の日本になった」と言い、だから自由貿易をさらに進めるためTPPが必要だと力説し、保護主義に陥ってはいけないと言う。トランプ次期大統領の誕生で世界が保護主義へ傾斜するのではないかと危惧するマスコミの論調も目立つ。
 こんなでたらめに乗せられてはいけない。
 そもそも自由貿易とは「自由」が付いているから、正義のような感がある。しかし始まりは産業革命で先に発展した英国が、支配国や世界を相手どって自国利益をさらに上げるために言い出したものだ。その時も国内産業保護のために数々の保護政策をしいていた。
 前世紀の大戦は保護主義が原因とされるが、それは逆で自由貿易の行き過ぎ(最初のグローバリゼーション)の反動で世界がブロック経済化を強め、結果起きた軋轢が世界大戦となった。原因は行き過ぎた自由貿易、つまりはグローバリゼーションだった。
 そして戦後、その反省に立ち、アメリカ主導でブロック化することを避けるため今のIMF等の国際機関が設立されることになる。その一つがGATTである。しかし途上国も先進国も同じ権利のもとで参加する国際機関は意見がまとまらず、議論は進まない。気候変動会議が良い例だ。持つ国と持たざる国、大国と小国の意見がぶつかり合い合意に時間がかかる。ガットはウルグアイ・ラウンドを最後にWTO(世界貿易機関)という正式な世界機関へ格上げ(1995年)されたが、実情は変わらない。時は冷戦後。資本主義の勝利が謳歌され、第2次グローバリゼーションが始まっている。遅々として進まぬWTOに業を煮やしたアメリカや多国籍企業は地域間の自由貿易協定締結へと舵を切る。1992年、NAFTA(北米自由貿易協定)が署名される。FTAの歴史は意外と古い。最初のFTAがEUの前進のECCと言われるし、ASEANNもFTAである。しかしNAFTAと大きく違うのは国対国ではなく、企業が全面に出てきたこと。アメリカを中心としたグローバリゼーションの荒波が本格化する。
 そこで総理への質問となる。
 日本は自由貿易で経済発展してきたのだろうか。日本の経済成長率が大きかった時代はいつか。1956年〜73年度は平均9.1%、74年〜90年度は平均4.2%、それが91年〜15年度になると0.9%に落ちる。これは世界も同じで、保護規制が今よりも格段に多かった1960年代〜70年代が、90年代以降よりもずっと速いペースで成長していた。例えば一人当たりの所得の成長率は、1960年〜80年が3.2%、80年〜99年は2.2%に下がった。途上国はもっとひどく3%から1.5%に半減する。中国とインドとの成長率を加味しても、今はもっと下がっている。つまりは、自由貿易という美辞麗句の仮面を被った新自由主義、グローバリズムは貧困と格差を世界に蔓延しているのである。

とここで議員総会の時間となった。続きはまた次の機会にm(_ _)m

2016-11-18 | Posted in 日記No Comments » 

 

TPP特別委員会での質問。

前回からつづきです。

 オバマ大統領は、TPPを中国包囲網の安全保障政策経財版として積極推進することを決め、それに豪州、日本が追随した。そのTPPから米国が抜けるということは、これ結構大変なことだ。経財的にも本来の安全保障政策の面でもほとんど機能しなくなる。というか機能させないことを次期大統領が選択したことになる。当然、米中関係も劇的に変化するだろう。そんな大転換が行われることがほぼ決まった日の翌日に、日本は脳天気に強行採決したわけである。

 そんな訳で以下の質門となる。
Q「トランプ氏のTPPからの離脱の意思表明は、中国との関係を見直すということ。敵対から友好への舵切りかもしれません。そうなると環太平洋の国々との安全保障関係も変わります。このTPPの強行採決は日本だけがその流れに逆らいたいという意思表示のようにも思いますが。総理のお考えをお聞きします」

 もう一つ。ロシアとの関係だ。トランプ次期大統領は選挙期間中、プーチン大統領に好意的な発言を繰り返している。ロシアは無関心を決め込んでいるが、TPPが米国中心の環太平洋経財版安全保障政策であるとすれば、ロシアもその成り行きは注視している。シリアやウクライナ問題でオバマ大統領は、本音は違っていてもロシアの足をひっぱる真似をし続けた(例えば、オバマ大統領は2014年夏、シリア空爆の直前まで追い込まれたが、ロシアの助け舟で空爆をしなくてすんだことなど、プーチン大統領にだいぶ助けられている)。しかしこれからそれがなくなり、米露関係は新たな展開をみせるだろう。TPPからの米国の離脱はロシアにとっても歓迎すべきことなのだ。そこで次の質門になる。
Q「もう一つ、今総理は12月のプーチンロシア大統領との会談をひかえていらっしゃいます。重要な会談となるでしょう。領土問題も重要な議論になると私も期待しています。TPPは米国を中心とした環太平洋の経済連携協定。米国の安全保障政策の枠組みのなかでできています。トランプ氏は選挙期間中からプーチン大統領に好意的な話をしていました。そのトランプ氏が離脱を表明したTPP。米露関係も見直される可能性もある。ロシアにとっては決して悪くないこと。しかしそれなのに安倍総理はその枠組み維持を強固に主張し、大統領選の翌日に衆議院で採決を強行した。日ロ会談を控えた我が国としては、非常に間が悪かったと思います。私はこのTPPの強行採決がプーチン大統領の心象に少なからず影響を与えたのではないかと危惧しますが、いかがお考えか」

 むろんこの質問にはまともな回答はなかった。質問の意味がわからなかったか、結構痛いところなのではぐらかしたかのいずれかだろう。強行採決は、12月の日ロ首脳会談が安倍総理が思い期待する話にはならない方に動く影響を与えた。なんとも間の悪い、なんの益にもならない、意味のない強行採決であった。

 さて、いずれにしても官邸や外務省は17日に行われる安倍、トランプ会談で頭が超痛いだろう。彼らが一番恐れるのが、日本の頭越しに米ロ、米中関係が動いていくことであり、見直されることだ。日本こそが東アジアにおけるアメリカの一番の理解者であり、同盟国である。そのことが戦後の日本外交の基本であった。その背景には冷戦構造があり、冷戦がなくなったあとは、意図的な中国、ロシア敵視体制をつくり上げ、巨大な軍事国家を維持してきたし、その枠組に日本、豪州、フィリピン、韓国を組み込んできた。それがトランプ氏の登場で大きく転換する可能性がでてきた。
 戦後最大の危機的不安状態に政府はあると思う。
 トランプ次期大統領との会談後、日本政府の姿勢が劇的に変わることもありうる。つまりTPP推進から一気に引くということ。もしそうなれば、会期延長はせず、継続審議とし次期国会は参議院で審議を再開させるという手でくるかもしれない。もしくは継続審議とせず、審議未了廃案で、TPPは葬られることも。

 安倍政権はトランプ誕生で一気に求心力をなくすかもしれない。まさにTPPでトランプのババを引いてしまった。

2016-11-16 | Posted in 日記No Comments » 

 

午前の特別委員会が終了。ただ今、昼休み。

 さて、「質問の意味が伝わらなかった」の意味だ。もちろん僕の指摘がずれていたか、説明不足だった感もある。言いたかったことはこうだ。
 中国包囲網の安全保障政策であるTPPから米国が抜けるということはどういうことを意味するか。
 安全保障政策が転換するということだ。おそらくトランプ次期大統領はそう考えているはず。純粋な経財連携協定であるならアメリカと米国企業が得する協定から抜ける理屈はない。
 TPPはなぜ安全保障的意味合いが強いか。経財で台頭する中国がさらにアジアで力を持つ前に、もっと言えば中国主導の経済連携協定が作られる前に、米国の考え、思想(これを政府は、自由と民主主義の思想といっている。もちろんこれは多国籍企業にとっての自由と民主主義と読み替えて差し支えない)をもって作った協定がTPPである。先に枠組みをつくっておき、あとから入りたければこっちの考えにそって国内政策を変えないとだめよ、と強制できる。共産党一党独裁体制と国家資本主義からの転換を図る目的をもっている。そんな協定に中国が入るはずはない。
 そんなTPPに付き合っているよりは、今の米中関係をバイで強化することが得ではないか、と企業家的純粋利得でトランプ氏は考えた。と思う。
 そこに気づいていれば、少なくとも次期大統領決定まで衆議院での採決がいろいろな理由で伸びたのだから、せっかくそうなったのだから(政府はもっと早く意思表示をしたいと思っていたが、農林水産大臣の思わぬ発言や自民党国対と理事の軋轢でそうなってしまった)、本会議での採決は先送りしてもよかった。むしろ投票日の翌日なのでもっと間が悪い。
 こんな対応をしているのは日本だけである。つまりは先のような意味合いを日本は強行に進めるべきと意思表示したことになる。
 なぜそんなことをしてしまったのか。そこに僕は安倍総理の思いが余りにも入り込んでいると思う。中国敵視、力で押さえ込む(軍事と経済で米国の力を借りて)という気持ちがあるからこそのなせる技である。そう考えないと意味不明な強行としか思えないのだ。

とここでまた委員会再開の時間となった。
 

2016-11-15 | Posted in 日記No Comments »