2016-07

選挙結果の若干の分析と展望③「生前退位の意向と憲法改正」

 喉から手が出るほど議席が欲しい自民党。その触手に絡め取られる人が現れた。何と民主党政権の時に復興大臣をやった平野さんだ。情けない話だが、知事選対応でほぼ消滅していた自らの政治生命を再生させる絶好の機会ではある。これで自民党は単独過半数の議席数に手が届いた。しかし以前書いた状況が変化することはない。

 安倍総理が考える最大の政治課題は依然として憲法改正だろうか。もちろん思い入れが強いのはわかる。総理の最大の支援組織といえる「日本会議」の悲願でもあるようだ。「彼ら」が理想とするのは戦前の思想であり国家像。本当にそう思っているようなのだ。
 元国家公安委員長の「2673年前(発言当時)の樫原宮での神武天皇の詔を憲法に書くべき」
 自民党の現政調会長の「国民の生活が大事という政治は間違っている」
 元同等法務大臣の「国民主権、基本的人権、平和主義を廃止すべき」
 といった発言を聞くたびに唖然とする。いずれも国民や国民生活よりも国家やその歴史を尊重すべきというもの。近代立憲主義の否定である。立憲主義思想がなければ近代民主主義もない。したがって「彼ら」は民主主義も否定していることになるのだが当人たちはそのことに気付いていない。というか否定している。むしろ明治憲法下の日本的思想が西洋のそれより優れていると思っているのだ。

 思想信条はもちろん自由だが、それを政治家が権力をもって国民に押し付ける。これはいけない。だから多くの人が嫌悪感を感じている。それが今回の選挙が彼らにとって「試合に勝って勝負に負ける」という結果を生んだ。仮に民進党がもっと国民から信頼される党になっていれば「試合」にも負けていたかもしれない。
 そのことを安倍総理は彼なりの肌感覚で感じていると思う。二度目の総理大臣。しかも二度目は、(「彼ら」が嫌悪する)「西洋民主主義」の中心的国家アメリカに忠誠を尽くしているし、それを背景にいわゆる「地球儀を俯瞰する外交」に積極的だ。現代の民主主義を否定し戦前(大戦肯定)の国家観に戻る思想を持つ宰相であれば、誰もまともに相手はしないし、世界の信頼を集めない。そのことを嫌というほど感じているのが安倍総理そのものである。

 よって前述のような疑問がわく。
 加えて、選挙後に突如報道された天皇の「生前退位の意向」もおそらく「彼ら」を驚かせた。「彼ら」が国家元首にしたい天皇が、「彼ら」がよりどころとしている「大日本帝国憲法」をひっくり返すような意向を示した。現天皇はおそらく、戦後民主主義を否定する「彼ら」(少なくとも安倍以前の自民党は基本は戦後民主主義派、いわゆる保守本流が主流)がこのまま主流になって、憲法改正までいくことに危機感を持っているのではないか。そのことは以前のブログ「人はみな平和を背負う旅人なり」に書いた。天皇としての最後の仕事をかけて国民に警鐘をならし、「彼ら」に抵抗する行動を「生前退位」という手段で表しているように思えてならない。だから右翼本流も少々静かである。

 このような推測のもとの考えである。平和主義、基本的人権、国民主権の現憲法の根幹に触る改正案は今の力関係の国会でも無理(もちろんそれ以外の憲法改正はあり得るが)。仮に自公が強行するという荒技があっても国民投票で否決される。そうなったら安倍政権もアウトだ。結果、日本会議的改憲思想の勢力は消滅するか、日影でこっそり棲息するしかない。「彼ら」はガラパゴス右翼であり絶滅危惧種なのだ。
 したがってそんな危険なカケを安倍総理は犯さない。彼の今の政治的課題は、祖父岸信介ができなかったもう一つの政治的課題。それは自らの政権でオリンピックを自国開催すること。岸は前回の東京オリンピック招致決定時の総理だが開催時は政界を追われていた。安倍さんは憲法改正と同じように祖父の思いを引き継ぐ。そのためには2018年9月までの自民党総裁任期を延長し、かつもう一度総選挙で勝たなければならない。2018年秋までに総裁任期を2期6年から3期12年に改正し、総選挙に打って出る。そのための仕掛けで頭がいっぱいのはず。と思うのだが。

2016-07-19 | Posted in 日記No Comments » 

 

選挙結果の若干の分析と展望② 「東高西低の原因」。

 各選挙区でその闘い方による結果の違いが明確にでた。
 一昨日、1人区で敗北した同僚と話をしたが、もっと明確に反原発と改憲反対を主張すべきだったと反省していた。電力や電機などの組合に遠慮して明確に主張しなかった民進党候補が敗北していると思う。その点、無所属の候補者は主張がはっきりして争点が明確になる分、有権者も判断しやすいのだ。無所属候補の多くが勝利したのも頷けるのである。
 正直言って原発問題はもうカタがついている。福島の現実を見れば国民は原発の新設も認めないし、再稼働についてもさらに批判が強まるだろう。要は原発推進のエネルギー政策にはもう戻れないのだ。そのことを政府も電力などの関連会社も勇気をもって自覚すべき時期にきている。FITが動きだし、発送電分離も始まる。再生可能エネルギー転換を電力や電機などの会社と政府が一緒になって強力に推進すれば、原発依存のエネルギー政策からの脱却はそう遠くなく可能になる。それまでのベストミックスとして現存原発の必要最小限の稼働は国民も納得する。
 国策で始めた原発推進。引く時も国策で引くしかない。立地自治体もそれで納得する。本音で原発を望んでいる人はほとんどいない。実際、原発の様々な費用やこれからの投資費を考えれば電力会社の本音もそこにあると思う。

 話がそれてしまった。今回も東高西低の結果が如実に出てしまった。保守地盤が強固だという説もあるが、それでは同じように保守が強い東北で野党統一候補、民進党候補は勝っていることを説明できない。
 僕は野党側にも問題があると思っている。それも社民党と労組(特に自治労)に関してだ。北海道と愛知の複数区では民進党が2人を擁立し勝たせた。両方ともほぼ労組は民進党に転換しきっている。そうでない東北はもともと保守が強かった。そこに自民党を割ってでた小沢一郎という政治家の影響によって保守が自民党と民進党に分裂している。だから勢力的に弱い社民党だが、民進党と共闘すること、そしてそこに共産党が加わることで五分の闘いをすることができた。

 西の方がどうか。西では小沢さんのような自民党を割って出る保守の政治家がいなかったため、保守=自民党の強固な一枚岩が残っている。一方の社会党は民主党と社民党に分裂し、いまだ解消していない。社民党の支持母体の中心は自治労と教組。(しかし教組はしたたかで地域政党としての社民党支持、中央政党は民進党と見事に割り切っている。)そんな訳で強固な自民党に対し、分裂した(民進党と社民党の)野党勢力がその時だけの共闘で闘いを挑んでも、もともと自社時代から力の差があった訳だから勝つのは難しい。強烈な風が吹かなければ保守の岩盤を突き崩すことはできないことになる。
 考えてみれば今の保守政治の源は明治の藩閥政治にある。したがって薩長土肥、つまり鹿児島、山口、佐賀、高知の保守地盤は他県よりさらに強い。特に鹿児島、山口は強い(だから今度の鹿児島県知事選挙の勝利は相当なことなのです)。保守が強い分、反目である左派も頑さを強めることになってしまい、必然、勢力は減退する。地方議員を出す地域政党として存続する道を選ぶしかないことになった。

 ドラスチックに合流した北海道や愛知。保守分裂の影響が残る東。一方で強固な一枚岩の保守地盤が残された鹿児島、山口を中心とした西。西で無所属候補がいなかったのは東のように「民進+保守+共産+社民」の構図が描けなかったことにある。唯一勝った大分は西では最強の社民地盤を持つ。「民進+社民」の構図でまだ五分くらいの闘いができる西では唯一の地域といって良い(沖縄はもっと別の構図である)。しかしここも徐々に勢力は後退しつつあるのではないか。

 話が長くなってしまった。言いたいことは民進党と社民党が名実ともに一枚岩にならなければ西ではこの状況が続くということだ。社民党を中央、地方で支える大母体は自治労だけになったと言って良い。その自治労も比例区では分裂選挙を続け、非常に危険な選挙戦を行わなければならなくなっている。私は勝たせてもらったが、残念ながら事実上のもう一人の組織内の大分出身の吉田社民党党首が議席を失った。

 自治労の政治的分裂が西日本の自民党優位に関係していると思う。それが今回の安倍政権大勝につながっている。そうだとしたら今回の選挙結果を真摯に受け止め、前に進む判断をする時期にきているのではないか。時間はそうある訳ではない。(つづく)

2016-07-13 | Posted in 日記No Comments » 

 

選挙結果の若干の分析と展望① 「大成功の野党共闘」。

 選挙、お疲れさまでした。ありがとうございました。勝って戻ることができました。このブログもあと6年継続することができます。
 さて選挙戦だったのでブログ更新もできずにいた。ご愛読の皆さんには申し訳ない、です。
 今回はその選挙のことについてだ。僕の結論は、月並みだが「絶妙なバランス感覚を示した有権者」となろう。なにも一人一人がそんなことを思って投票したり、棄権したりするわけないから、それぞれの行動の総体の結果としてそうなったということなのだが。

 まず安倍政権にとってはどうだろう。決して喜んで良い結果ではない。課題の3分の2は到達したようでそうでもない。自公とお維で3分の2には届かず。非改選の無所属の改憲賛成議員を加えての3分の2だから勢いはそがれる。自民単独過半数にも届かなかった。唯一達成したのは自公合わせての改選過半数の61議席である。これは元々意図的に低いハードル設定なので、評価は低い。達成できなければ安倍退陣の大敗北のはずだ。
 
 これによって何が起きるかと言えば、公明党の存在感増。それとお維の野党スタンス化だろう。つまり安倍悲願の改憲議論はスタートから多難だということ。山口公明党委員長は選挙の結果がでる前から改憲については消極的なことを漏らし始めていた。公明党にとって一昨年の集団的自衛権行使や昨年の安保関連法の成立などは、母体の創価学会を揺るがす「とんでもない」政治的転換だった。言い訳じみた弁明でかろうじて会内混乱を押さえている。それでも会員からは様々な形で異論が飛び出している。これ以上の混乱は党の命取りになる。おそらく安倍さんや取り巻く国粋主義的頓珍漢右翼派議員の思い描く憲法改正は事実上不可能になったと言える。つまり安倍在任期間内の憲法改正は非常に厳しい。

 野党はどうだろう。野党共闘は間違いなく成功した。特に共産党と共闘できていなければ自公で3分の2。自民党で単独過半数を達成していた。つまり上述した逆のことが現実化していたはずだ。そう考えれば「試合に負けて勝負に勝った」ことは明々白々ではないだろうか。特に政権への強烈なパンチとなったのは福島と沖縄での野党統一候補の勝利は大きい。原発政策と辺野古という政権が抱える二つの難題が益々重くのしかかることになる。
 忘れてならないのは同日行われた鹿児島知事選挙。原発推進の現職知事を新人の三反園さんが原発反対を訴えて勝ったことである。余り知られていないが鹿児島県の知事はほとんどが総務省からの天下り知事。それも事務次官クラスが多い。現職知事も総務省官僚だが事務次官経験者ではなかったが、ずぶずぶの中央直轄である。
 さすがに保守王国の県だけあって県民は参議院は自民党に勝たせたが、知事選は地方が主役を主張したのだ。これは鹿児島県の保守地盤を揺るがす。安倍さんは「おらが春」を謳歌しているようだが、どっこい徐々に民意に浸食され始めているようだ。

 さて民進党が不甲斐ないのは、そのことをもじもじ、いじいじして明確に主張しないことである。(つづく)

2016-07-12 | Posted in 日記1 Comment »