日記

遠い昔の国鉄の分割民営化が、今産む「15の春」。

 先週末、北海道の青年部の集会で話をした。政権批判よりも北海道で今起きていることの原因は何かを話、これから何をすべきかを感じてもらい、政治への関心を強めてもらいたかったからだ。市場原理主義政策の負の遺産を一番感じるはずの地域で暮らす若者だからなおさらだ。
 北海道では学校の統廃合が加速している。義務教育も深刻だが、15歳で親元を離れなければならなくなる高校の統廃合は町の将来を変える。足寄町では地元の足寄高校の定数割れを防ぐため、町営の進学塾経営に乗り出した。町でも進学のために塾に通う子がいるが、塾は車で1時間ほどの帯広市まで行かなければならない。必然、高校移住が増え地元高校へ進む子が減る。その防止のための苦肉策である。足寄高校在学生は町営進学塾には無料で行ける。
 一方、渡島地区の福島町でも高校の統廃合が深刻な問題になっていた。もし地元高校が無くなれば隣町の木古内まで行かなければならず、雪の冬期間は車で1時間を超える通学は無理だ。沖縄の離島では15で親元を離れなければならない高校移住を「15の春」と悲哀をこめて呼んでいるが、同じことが陸続きの地でも起きつつある。
 仮に鉄道が残っていたら北海道での15の春の問題は深刻化していないだろう。福島町には松前線が通っていたが、国鉄の分割民営化の翌年の1988年に廃線。皮肉にも来月、近くを新幹線が通るが地元には関係ない。
 JRになって北海道は経営難のため廃線を進める。分割民営化の時の基金の運用益ではどうにもならない。札幌周辺の路線も赤字である。
 一方、ドル箱の東海道新幹線を持つJR東海は内部留保を溜め込み、自力でリニアを建設するとまで言い切れる。国鉄であれば、いや仮に民営化しても分割をしていなければ関東や東海道新幹線の利益を地方の路線経営に回せたはずだ。鉄道を社会的共通資本、公共資本と考えない面々はそんなことは考えない。
 北海道では新幹線開業が期待されるが、そんな増収は起きない。すでに大阪博多間開業で証明されている。新幹線は走らせるにも金がかかる。開通後も廃線は止まらないだろう。北海道の多くの地域で高校統廃合と一緒に「15の春」があちこちで起こる。経営者は鉄道からバス路線に転換というが、これも証明済みだ。
 かつての赤字ローカル線廃止のときもそんなことを言ってたが、あっという間にバス路線も廃止に追い込まれた。
 遠い昔の、記憶にも無い国鉄分割民営化が今の北海道で「15の春」を産んでいる。公共サービスの重要性、社会的共通資本を守り拡大しなければ日本は地方から沈んで行く。そんな話をした。
 懇親会の始まりのとき、ある青年が駆け寄り、「話に感動しました」と言ってくれた。たった20分足らずの話であったが、幾人かの心には響いたようだ。

2016-02-29 | Posted in 日記3 Comments » 

コメント3件

 ももちゃん | 2016.03.09 23:59

どこかの田舎で一人の女子高生のために廃線を卒業まで延期して一日一往復だけ走らせていた線もあるようですが、結局観光でもできない限り田舎で線を維持はできないようです。田舎だと、線路代がないバスの方がまだいいのでしょうかね。
それでもまだアジアの他の国より鉄道会社がかなり親切らしいのでなんだか悲しくなりますね。
九州も長崎、鹿児島と離島行政をもっともりあがればいいですけど。

 ももちゃん | 2016.03.10 0:07

そういえばうちの地元もバスは民間が線を廃止したので隣の市にお金を払って市営バスを延ばしてもらってるのです。しかしながらバスをつかう大量の高齢者は無料福祉バスしか使わないので結局だれも市営バスを利用しません。からのバスがむなしく走っています。
誰でものれる100円バスの方が実績としては維持しやすいのかもしれませんね。
福祉バスは高齢者たちが若い障害者を怒鳴って利用させないようにしましたし、高齢者がそんな感じなので皆町を出ていきましたね。

 江崎 | 2016.03.10 7:52

自動車の驚異的なスピードの普及が、本来社会的共通資本である公共交通をコストで評価する方向に向かわせます。車VS電車・バスという構図です。結果が今のような状況です。
車VS公共交通の闘いはいまも続いていますが、これからはもう少しバランスの取れた流れになるでしょう。公共交通の見直しが進むはずですね。そうしないといけません。

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