2015-05-13

大阪都構想なるもの。

通称、大阪都構想と言われる自治体再編の是非を問う住民投票の結果が今度の日曜日に出る。

「えっ?」と驚かれるかもしれないが、都構想と言っても大阪府が大阪都になることは法律上あり得ない。大阪府にある2つの政令指定都市をいくつかの特別区に分割して大阪府を都にすることが、都構想を公約に府知事になった橋下現大阪市長の考えであった。しかしかれの構想は徐々に縮小していく。

もう一つの政令市の堺市は市長選で反対派の現市長が当選したことで、堺市が離脱。地域政党の維新の会の隆盛華々しい頃、民主党政権下でつくった法律は前述の通りである。従って今争われている住民投票の内容は、大阪市を廃止して5つの特別区に分割するだけのもの。

つまり大阪市廃止構想なのである。だから住民投票できるのは大阪市民だけで、それ以外はまったく関係がない。

元々大阪都構想は地方分権のための政策として橋下氏は提唱していた。しかし現行の地方自治制度の中で、一番、国、県が関与できない仕組みなのが政令指定都市である。だから橋本氏がいう地方分権の思いとは逆行することになる。彼は首都東京を思い描かせるレトリックで大阪都構想をぶちあげ、政治家として勝負してきた。東京と大阪ではお金持ちの次元が違う。東京都は不交付団体でありつつ、さらに集まった法人税の一部を全国に剰余するほどの金持ち自治体である。

こんな話がある。以前、渋谷区の職員の方と話をしたことがある。特別区は法人税は都に吸い上げられるので自前の税源の一つは個人住民税となるが、この個人住民税だけで毎年使いきれないと嘆いてた。いかに税収が潤沢かお分かりいただけるだろうか。翻って大阪市は政令指定都市ではあるが国からお金を交付して貰わなければ運営に支障が出る「交付団体」だ。東京都のような仕組みは全く描けない。

大阪が都になったからと言って税収が増えることはないうえに名前だって大阪府のまま。加えて大阪市が廃止されれば、それまで市が集め市のために使っていた税金を今度は大阪府に吸い上げられることになる。保育などのサービスの質がむしろ悪くなる可能性大で、市民にとってはふんだり蹴ったりなのだ。大阪市民にとって悪くなることをそこの市長が推進するというからわけがわからない。

推進派が主張する一つに無駄な二重行政がある。確かに大阪市は大阪府の中心部を占め当然税収も多い(それでも交付団体だが)。大阪府から言えば何でもかんでも大阪市の意向を聞かなければならない。これは府知事にとっては大変なことだろう。しかしこれは他の19の政令市を抱える道府県も同じこと。どこにだって二重行政はある。神奈川などは横浜、川崎についで最近、相模原という政令市もできたので県の半分くらいは政令指定都市に抑えられてしまった。しかし他の道府県で都構想なる馬鹿げた話が進むことはない。

橋下府知事時代はしょっちゅう大阪市と険悪だった。要は知事のマネージメント能力しだいなのである。従って二重行政による無駄は理由にならない。むしろそれまで大阪市がやっていたサービス。例えば上下水道や清掃などなどは一部事務組合という新たな地方自治体をつくって対応しなければならないので、特別区、一部事務組合、大阪府という三重行政となり無駄が多くなってしまう。

特別区という制度は実は中途半端な仕組みで、地方自治体のようでそうではない。つまり権限が普通の地方自治体ほど認められていない。だから東京23区の特別区はもっと自治体としての権能が欲しいと思っている。その一例として元々東京都が所管だった清掃業務を要望に従い、特別区に移譲したという経緯もあるのである。

なにゆえこんな馬鹿げた構想のために市税まで投入した住民投票が行われるのだろう。時代に逆行し非合理的な都構想なるものはそのうち頓挫するはずと私は少々たかをくくっていたのだが。失礼だが、大阪人特有のシャレなのかと思ってもみたが。原因は市民の既成政党離れにあるようだ。既成政党批判をする橋下なる政治家に期待を寄せてきた大阪の人たちの思いの現れである。

とはいっても本当にここまで来たら、橋下なる政治家の本質を見極めてもらうしか無い。今回の投票でもし、賛成派が一人でも多ければ(投票者総数の過半数なので投票率は大きく影響する)大阪市は消え、そして二度と元に戻ることはない。ここにきてやっと市民の皆さんもその本質が見え始めたらしい。草の根の運動も増えている。おもしろいことに自民党と共産党が反対の先頭にたってスクラムを組んでいる。我が民主党も反対と言いたいところだが、府連は態度を明確にしてたたかっているが、本部は例の維新との選挙協力のからみで「地方の判断」とした。情けないがまたも民主党の限界を露呈してしまった。

1956年に5つの大都市が政令指定都市となり、その後増え現在は全国に20市ある。大阪市は最初の5大都市の一つで由緒ある政令指定都市なのだ。市の歴史はもっと古く、大阪市が誕生したのは1889年まで遡る。畿内の発展を牽引してきた歴史と伝統と文化と産業の街、大阪。国内随一の大都市大阪の歴史がまもなく決まる。一人の訳の分からない政治家の無謀なまでの強引さに引きずられたまま大阪市を消すか消さぬか。

究極の民主主義的選択が大阪で行われている。この歴史上初めてと言える劇的な直接民主主義の舞台を眺めているだけではもったいない。今からでも遅くない。投票はできなくても関わることはできる。反対の紙をもって市内を歩くことだって良い。舞台に上がり参加しようではないか。大阪市を守るため。この国の未来のために。

 

 

 

 

 

 

 

2015-05-13 | Posted in 日記No Comments » 

 

今日の平和の句

「無言館に霊(たま)留め置くや蝉しぐれ」。

鷹場(たかば)正明さん(65) 三重県東員町

金子兜太 「長野県上田市にある戦没学生の絵は、無言の抗議を今も伝えている。蝉しぐれに囲まれた抗議の声は戦争を憎み、恋人を想う」。

東京新聞より

2015-05-13 | Posted in 日記No Comments »