2014-02-28

なぜ、怒りはアンネに向かう。

関東で「アンネの日記」関連の本が破損させられる被害が相次いでいます。

すでに40の図書館で310冊が被害にあっています。なぜ?。日本の報道機関は、この「なぜ」にあたる部分を報道しません。そうしているとやはり隣国の報道が「日本の右傾化が原因」と指摘しだしました。

ヨーロッパでは随分前から貧困の拡大とともに移民排斥を訴える若者を中心とした極右が増加していました。しかし日本では、昔からの右翼や保守層の中に右派はいても、まだ極右というところまではいっていませんでした。しかし、ここ数年で比較的若い層のネトウヨやヘイトスピーチが増加しています。

60年安保や全共闘世代も若者が中心でしたが、当時は参加していた若者は闘争が終わると水が引くように運動から身を引いて、普通のサラリーマンになり高度成長を牽引します。社会が彼らを飲み込むだけの余裕がありました。

ところが現代はどうでしょう。バブル崩壊後に社会人になった若者、つまりロストジェネレーションはいつか正規職員にと思いつつ、フリーターのまますでに40代になった世代です。それ以降、社会は格差をつくりつづけ、現代は若者の貧困が社会問題になりました。格差はいつのまにか未来ある若年層にとって深刻な問題となっています。

ヨーロッパの場合は怒りが移民に向かいますが、日本の場合、向こうのような移民国家ではありません。しかしあえて探し出し「在日」の皆さんを標的にヘイトスピーチが始まります。やがて中国や韓国といった国や国民に怒りが向けられるようになります。右翼的な政策をあえて訴える安倍さんに支持が集まります。都知事選で田母神さんに投票したのは多くが若者でした。標的は安倍さんや田母神さんと対峙する政党や支持者となります。

明らかに日本社会の基底が変わりだしています。

ヨーロッパでは保守でさえ極右と一線を明確に引いています。極右政党が政権を握らないように保守と左派が連立する場合も不思議ではありません。二度とナチスのようなファシズムの台頭を許さないという強い反省がそうさせます。日本の場合、残念ながらそれと違い、そこまでの反省と確固とした意思が確立せぬまま、高度成長と一緒に憲法の平和主義や疑似民主主義のようなふわりとしたものが広がってきたような気がします。

ドイツでは禁止されており、欧米ではほぼ使われない右手をあげたナチス式宣誓のやり方も日本では未だに平気で使われています。社会の中にファシズムを憎む思想が形成されています。むしろ過去の戦争を否定しない思想を生かし続けた結果が今の日本社会かもしれません。

「アンネの日記」へなぜ怒りが向かうのか。単なる犯人探しではなく、その怒りの理由をしっかりと社会が受け止め、議論しなければアンネの悲劇が繰り返すことにならないでしょうか。政治の責任は本当に大きいと思います。そこに身を置くものの1人としてあらためて、社会とは自由とは民主主義とは、そして平和とは、世界とは問い続けなければならないと思います。

2014-02-28 | Posted in 日記No Comments »