2013-05-09

憲政史上初の常任委員会委員長解任の真相

野党共同で提案された川口環境委員会委員長の解任決議案が、賛成120、反対107で可決され解任が決まった。これまでは全てが自ら辞任の形であり、常任委員会の委員長が解任決議で解任されたのは、衆参合わせて憲政史上初のこと。

今朝の読売新聞の論説では、「解任は行き過ぎだ」と少々与党びいきだが、これには異論ありである。
ことの真相はこうだ。
国会開会中の委員長の海外渡航は公務の場合を除き慣例で禁止されている。やむを得ない場合については議事運営委員会委員長の判断により、なおかつ当該委員会の理事会の承認が必要になる。与野党が長い間かかってたどり着いた取り決め事項なのだ。
川口さんの場合、当然公務では無く、外相時代の友人との会合というもの。もともと4月23日、24日、25日の要望だったようだが、議運理事会での調整の結果、23日、24日の2日間に短縮し25日に環境委員会を開催することで、参議院議運委員長(自民党)が中国渡航を許可した。参議院は、日程上、25日に環境委員会を開催することが必要と判断したことになる。当然、環境委員会の招集は委員長である川口さんの職務であり、全て承知の上で中国へ出発したはず。

しかし残念ながら中国側の日程が折り合わず、知人の国務委員との面談ができないこととなった。この時点で帰国すれば良かったが、川口さんは帰国日に電話で参議院自民党国対委員長に渡航の1日延長を申し出る。
おそらく国対委員長が許可したのであろう、議運委員長(自民党)は帰国を勧奨するも、本人は従わず、自ら招集した25日の環境委員会をボイコットすることになった。

25日の環境委員会は開催時間わずか10分のもの。「10分くらいならいいじゃない」と軽く見る向きもあるが、そう簡単ではない。この10分を入れるために与野党が国対や議運で侃々諤々と議論をする。この10分があるから次の審議や本会議の日程が立てられる。つまり全ての国会スケジュールと連動する。国会というところはそんなことを繰り返す舞台である。そのことをどうのこうの言っても仕方がない。そうなっている以上はシステムが変わるまで、あるいは変えるまで従わざるを得ない。社会一般、どこでもそういうものだ。

ところが、聞くところによると、川口さんが日本にかけた電話は国対委員長への1本だけ、迷惑をかけることになる環境委員会理事等への「ほうれん草」(報告、連絡、相談)は一切無かったようだ。自民党も含め様々な関係者を怒らせるような子供染みた対応だったようだ。
25日は委員長代理を立てることも可能だったろうが、それもできるような状態ではなかったのではないか。連休明けの予算委員会の審議にも影響し、今度は自民党が昨日の予算委員会の審議を拒否。野党ならわかるが、与党の委員会ボイコットも前代未聞である。

結局、川口さんは辞任せずに憲政史上初の本会議での解任決議にまで発展した。

今回の顛末で見えてきたのは、自民党と川口委員長の「おごり」である。おそらく自民党国対が委員長を帰さずともが何とかなると判断した。国会が混乱しても世論が味方すると考えた。野党のどこかが味方するだろうと甘く見た。
川口さんも10分の委員会開催よりも、中国に残って国会委員長職を忘れて、元外相としての議員外交をした方が国益にかなうと思い違いをした。しかし、誰と何時会って、どんな話をしたかはついぞご本人の口からは聞かれなかった。

混乱必至の国会が容易に想定できたはずだが、それが見えなくなってきている。「驕り昂り」は組織や人をそうさせる。今回の件は、どこをどうとってみても非は自民党と川口さんにある。

高支持率は安倍政権にとって「両刃の剣」となるかもしれない。「驕り昂り」をどこまで自制できるか。夏の参議院選までまだ2ヶ月以上ある。

2013-05-09 | Posted in 日記No Comments »