◯江崎 それは確実なのでしょうか。結果として今いろいろ出てきていますけれども、それがウエットだったかどうかも非常にあやふやになってきている。今、「原子力ベント」でネット検索をしますと、トップに「東芝の原子炉格納容器のベント装置の特許」という、これが来ます。極めてマニアックなものなんですけれども、そこにはこう書いているんです。
「日本の原子力プラントは世界と比較して構造上安全性が高いので、過酷事故(いわゆるシビアアクシデント)、これは工学的に起こり得ない、そういう事象として考えて、過酷事故対策を実施する義務付けは今のところしていない。」。これは事実ですね。「過酷事故のための設備設置は一般大衆に対して原子力プラントについての安全性の不安を必要以上に感じさせ、原子力発電への社会的理解を得る点では好ましくないという支障があった。」と、こういうことを書いた上でプラントの特許申請をしている。
安全神話をつくり上げ、過酷事故対策というのを本当にないがしろにし、原子力政策を邁進してきた政府の姿勢がある。これは自民党の皆さんにも考えてほしいんですけれども、そのことを今問われている。ヨーロッパは、どんなベントであれ、結構大きな巨大フィルターが付けられているというふうに聞いています。そして、フィルターも付けずに、ドライなのかウエットも分からないというベントをしてしまった。これは事実なんですね。政府はこれまで巨大なベント用のフィルターを付けることを義務化していません。東電等の民間の電力会社に自主的に任せているという、こういう実態なんです。で、過酷事故が実際起きたんですね。それでどれだけ放射能が広がったか、これも非常に重要なことなんです。これから先、計画の見直し、フィルターの義務付けを事業所ごとにやっぱりきちっとやっていく、これが必要じゃないんでしょうか。大臣にお聞きします。
◯海江田経産大臣 過酷事故を前提にしてということでありますが、こういう事故が起きてしまったわけですから、やはりこの過酷事故対策の在り方について、予断を持たずにしっかりと徹底的な検証をして見直しを進めていこうと思っております。ベントにつきましても、私がウエットベントだと、水を通すと、必ず通してくださいということを言いましたので、ウエットベントだと承知をしております。
◯江崎 済みません、再質問させていただきます。そうしたら、どうされるんですか。義務化をされる、フィルターを付けるという過酷事故対策はこれからされるんですか、されないんですか。
◯海江田環境大臣 実は、私も、ウエットベントの方はそういう意味で水を通すからということでしたけれども、もう一つ、ドライベントがあるという話も聞きまして、そのとき、当然のことながらこれはフィルターが付いていると思っていたんです。ところが、そのフィルターが付いていないということでありますから、これは今、特に福島の場合はああいう状況でございますので、すぐ取付けをするというような工事もできないわけでございますが、やはりこれは、当然のことながら、とりわけドライの方にはこれはやはりフィルターを付けなければいけないと思っております。
◯江崎 東電だけではなくて、全ての原子力発電所をもう一度それで見直していただきたい。そして、ウエットも、事故によっては機能しないかもしれない。これがはっきりしたんですよ、今回。
◯江崎 班目原子力安全委員会の委員長の静岡地裁での浜岡原発差止め訴訟での発言は極めて有名な話です。私もその速記録を取り寄せました。その中に、
「非常用ディーゼルが2台動かなくても、通常運転中だったら何も起きません。ですから、非常用ディーゼルが2台同時に壊れていろいろな問題が起こるためには、そのほかにもあれもこれも起こる、あれも起こる、これも起こる、仮定の上に何個も重ねて初めて大事故に至るわけで、だから、そういうときに非常用ディーゼル2個の破壊も考えましょう、こう考えましょうと言っていると、これも可能性ちょっとある、これもちょっと可能性がある、そういうものを全部組み合わせていったら物なんて絶対造れませんよ、だからどこかで割り切るんです」という発言をされています。
裁判は2007年です。これは、2007年だったら班目現委員長だけのお考えではなかったと私も思います。ほとんどの方が、全てのここにいらっしゃる方もひょっとしたらそういう考え方であったのではないのかと。産業界はもとより、専門家も政治家もマスコミも、原子力に関する全ての皆さんの思いの中心が今のような考え方であったのではないのか。
最悪の事態を想定すれば物は造れない、だからどこかで割り切る、最悪の事態のレベルを下げてしまう、それ以上のことは「想定外」だ、これが我が国の原子力発電の安全神話をつくり上げていった。安全だから過酷事故はあり得ないのだから規制の中には入れない、安全だから原発の事故は起きない、安全だから市民に対する安全対策は適当でよい、安全なんだから市民に不安を与える情報は極力出さなくてよいと。こういうのは意外と行政の中にあるんですけれども、我々は3月11日に経験をしたわけですから、それであってはならない。班目さんのこの発言を振り返ると、何と無責任だったのかというふうに思えるのは、恐らく3月11日を経験をしたからです。最後に大臣にお聞きします。こういう思いがあって、3.11が起きた。そして、これからの国民の思いを考えると、やはりゼロベースで安全を考えていく。安全神話を崩して、過酷事故に対してしっかりとした目線を持って対応していく、これが必要だろうと。これは全ての政治家に求められているものだろうと思います。最後にその決意を是非お聞かせください。
◯海江田経産大臣 委員もお話しになりましたが、私自身もこの2011年の3月11日の前と後とでは、やはり原子力発電所の安全性ということについて大きく転換をしたということは事実であります。そうした安全神話というものが多くの国民から失われて、むしろ不安である、心配である、危険であるという意識があるわけでありますから、やっぱりそういう人たちの不安に対してどうやって少しでも安心を得られるために努力をするかということがこれからの私の役割、それから原子力行政全般に携わる者の役割ではないだろうかと思っております。(了)
・・・安全神話が我が国原発へのフィルター設置を怠らせた。そしておそらく2011年3月11日まで時の閣僚や多くの政治家がそのことを知らなかった可能性が高い(私もその一人だが)。だがその問題を知った以上、二度と努力を怠ってはならない。当時の経産大臣もそう約束し、フィルターを設置しなければならないと考えた。
あれから1年、政権も大臣も変わった。今、大飯原発の再稼働が現実味を帯びつつある。再稼働を承認するための新基準の中にベントにフィルターを取り付けることの1項が入った。しかし、これは設置する「約束」で済まされる。5月5日に現在唯一稼働中の泊原発が点検で停止する。それまでに大飯原発が再稼働しなければ我が国全ての原発が停止する。それを避けたいという勢力の思いが野田内閣を動かす。フィルター設置までおそらく数年はかかる。再稼働すればその間、またフィルター無しのまま原発が動くことになる。「もしも」・・・大飯原発をシビアアクシデントが襲えば、福島と同じ事を繰り返すことになる。
フィルターが整備されるまで再稼働は行わないことの勇気、英断が3.11を経験した政治家には備わっていなければならない。仮にそのことで国民に我慢を強いることになっても日本国民は努力するだろう。必要なのは情報を公開し、今すべきことの重要性を国民に指し示すことではないか。
一縷の危険性に蓋をし、再稼働の道を歩めば、安全神話の復活となる。政治は危うい。


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