2017-12

トランプ政権と労働運動

 「労働権法」。聞きなれない法律名です。文字列から想像するに、労働者の権利確立に関係する法律かなと思うのです。
 日本の法律ではありません。アメリカの法律です。成立は1947年ですから結構古い。戦前、ニューディール政策なんかの関係で米国の労働組合運動は大きく前進します。その揺れ戻しというか経営側の巻き返しで成立したのがタフト・ハートレイ法。労働組合の権限を制限するための法律で、その中に労働権(Right to Work)なる権利が明記されました。
 どんな権利かというと、労働組合に加入するも、しないも労働者の自由という権利なのです。さすが自由の国アメリカです。ユニオンショップ協定のような会社員=組合員といった組織強制が禁止され、当然チェックオフのような組合費徴収もできなくなります。結果、組合員が減少し、財政基盤も弱くなりますから、自由の名をかりた労働組合潰しの法律だと言えますね。
 現在アメリカでは、28州で同法が法制化されています。企業側からしたら労働組合権限が弱いほうが良いので、労働権法が無い州からある州へ会社を移したりするので度々論争となりました。さてその古くて新しい問題がトランプ政権下で蠢き出したことを、12月号の「生活経済政策」(生活経済研究所)が特集を組んで報じています。
 米国の労働組合組織率は10.6%で、随分低い(日本17.3%、平28年厚労省調査)。その内、民間部門は6%。労働権法成立以降、米国では労働組合組織率低下に歯止めがかかっていません。そしてさらにトランプ政権の誕生と上下両院での共和党の過半数獲得によって、労働組合を標的とする団体やネットワークの動きが活発化しているそうです。そのネットワークの一つが全米労働権委員会。ユニオンショップや組合費徴収を徹底的に狙い撃ちし、労働権法制定州をさらに広げるとか、全国一律法制化を進めるとかやってるようです。最近では、公務員組合の組合費強制徴収が違法との訴えをイリノイ州で起こした裁判の支援を行っています。
 米国で起きることの多くがその後日本で起きているわけですから、日本の労働組合も油断ならずです。特に連合参加の民間産別のほとんどがユニオンショップ体制。会社員=組合員という強制的組織制度があるからこそ成り立っているわけです。米国の労働権法のようなものが成立したりすれば、ほぼアウトでしょう。そのことをちらつかされでもしたら、益々権力に擦り寄らざるを得ない酷い状態にならないとは言いきれませんね。資本対労働はいつの時代も敵対する関係にあります。労使協調も良いですが、爪は何時でもといでおかないといけません。

 

2017-12-04 | Posted in 日記No Comments »