2017-04-18

安全保障の表と裏。

 トランプ大統領のシリア空爆以降、北朝鮮のミサイル発射もあり朝鮮半島有事危機がお茶の間の話題にもなりだした。どちらかと言えば僕はTwitter等で空爆を真っ正直にとらえることの危うさを主張してきた。マスコミの論調だけに左右されず、空爆以降の世界情勢がどうなったか(アメリカ国内も含め)を冷静に見極めていくことが益々重要だろう。恐らくこのブログをご覧の方々はそちらの方の面々だと思う。
 さて、そんな中、ジャーナリストの高野孟さんが、自身のネット雑誌「THE JOURNAL」で「中国脅威論の嘘」を論じている。興味深いので完結したら(上中下の3部構成のようで今は中まで発信中)、概略ここでも紹介したい。
 今日はそのさわりの部分にあったこと。
 あの冷戦時代、西側諸国はソ連脅威論で蹂躙されていた。我が日本も北の脅威に備え陸自の中心部隊を北海道に展開していた。冷戦後しばらくしてソ連に代わって出てきたのが、中国と北朝鮮の脅威論。中でも尖閣をめぐる中国との関係はことさら煽られるようになる。話は変わる。戦後、領土問題を3つも抱えた国は日本くらいだろう。そのいずれもがサンフランシスコ講和条約がらみ、つまり米国の戦後戦略に関係している。3つの領土問題の中で、唯一日本が実効支配している領土が尖閣諸島である。我が国が支配しているのだからデンと構えていれば良いのだが、なぜか政府はいつ中国に奪取されるか戦々恐々としている雰囲気を装っている。高野さんの「中国脅威論の嘘」ではそこんところ、つまり「安全保障の表と裏」を書いていてなるほどとなる。
 それた話が長くなった。
 週刊誌等が書き立てた冷戦時代の危機の醸成はこうだった。
 ソ連は極東に強力な機甲師団を2つ備えていて、これがいつ北海道に攻め込んでくるかわからない。それに備えて、陸上自衛隊1,000両の戦車で北海道原野で迎え撃つ、その間に空自や米空軍は出動し戦術核兵器の使用可能性含めて爆撃する。そうこうしているうちに沖縄から海兵隊が駆けつける・・・というのが日本有事のシナリオ。
 そこで高野さんは、当時「そんなことが本当に差し迫っていたのか」と陸自北部方面隊の幹部に「週刊誌はあんなことを書き立てているが、どうなんですか」と尋ねたそうだ。
 その幹部が言うには、「いまソ連の極東の港に輸送船がいないんです。戦車は空を飛びませんから、いかに強力な機甲化師団が存在していようと、それは“潜在的脅威”に留まっているということです。輸送船が欧州方面から回送されるなどして集結が始まったとなれば、それは“現実的脅威”に転化したと判断して、我々は戦闘準備に入ります」とのこと。なるほど軍人さんは冷静なのだ。
 「だったら、週刊誌があんな風に無責任に煽るのを放置しておくのですか」と訊くと、「あれはあれで、どんどんやって頂いた方が我々も予算が取りやすくなるんで……」というまことに率直なお話だった・・・というお話である。
 このように、安全保障には表の危機と裏の危機があることを知っておく必要がある。
 そう考えると、野田総理大臣時代、尖閣を国有化した。その頃、「動的防衛力」という新しい言葉が登場し、北海道に多く展開していた自衛隊を南の海洋に移す方向転換を行ったのが、当時の民主党である。なぜ尖閣危機が生じたか。その後、どうなったか。ここで詳らかに触れないことにするが、「安全保障の表と裏」を考える皆さんはとうに承知のことであろう。

2017-04-18 | Posted in 日記No Comments »